手作りの『発酵トマトケチャップ』。失敗しないためのポイントって?教えて!!発酵時間と温度について

健康への意識が高まると共に、私のまわりでも発酵食品に興味をもち、手作りする方が増えてきました。そして、よく質問をいただくのが発酵時間と温度について。

発酵トマトケチャップを作る際も、成功するか失敗するかはこの2つが大きく関わっているんです。今回は発酵のメカニズムという観点から、発酵時間と温度をクローズアップしたいと思います。

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『発酵トマトケチャップ』ってなに?


『発酵トマトケチャップ』は、やわらかく煮たトマトと玉ねぎに塩、米麹、水を加えて発酵させたもの。砂糖不使用のケチャップです。作り方は以下の記事をご覧ください。

「『発酵トマトケチャップ』の作り方。意外と簡単!3ステップでできちゃいます!!」

得られる効果・効能はたくさんあります。トマトや米麹の栄養価、発酵させることで得られるメリットについては、以下の記事を参考にしてくださいね。

「手作りの『発酵トマトケチャップ』。嬉しい効能とは?効果的な摂り方もご紹介します!」

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麹が作り出す発酵食品


発酵ってなに?

微生物(酵母・カビ・細菌など)の働きによって、有機物(タンパク質・デンプン・糖など)が分解され、別の物質に変化すること。

ほとんどの市販のケチャップには、甘味料が使われています。『発酵トマトケチャップ』が砂糖不使用なのにほんのり甘いのは、麹菌が炭水化物を分解してブドウ糖にするから。甘酒と同じメカニズムです。

ようするに、発酵食品を失敗なく作るためには、微生物が積極的に有機物を分解できるような環境を整えることが重要だということなんです。

その環境のなかで大きく関わっているのが「温度」。温度管理が成功を左右すると言っても過言ではありません。


麹ってなに?

麹とは、米、麦、大豆などの穀物に麹菌を繁殖させたもの。『発酵トマトケチャップ』で使っている米麹は、蒸したお米に麹菌を種付けして作られています。

麹菌は「ニホンコウジカビ」という菌(カビの一種)。日本特有のもので、国菌に指定されています。


麹菌が発酵食品を作るメカニズムとは?

麹菌は、有機物であるデンプンやタンパク質をそのままの状態で利用することができません。吸収するためには、いったん分解する必要があります。そのために酵素を体外に分泌します。

麹菌が生成する酵素は、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、ペクチナーゼなど30種類以上。食物に含まれる栄養素を分解して、消化・吸収を助ける役割があります。


〇アミラーゼ  
デンプンをブドウ糖に分解する
〇プロテアーゼ 
タンパク質をアミノ酸に分解する

酵素の特徴とは?

酵素のほとんどはタンパク質でできています。ヒトの体内には、約5,000種類もの酵素があると言われています。

なぜなら、酵素はそれぞれある特定の反応しか触媒することができないからです。デンプンを分解する酵素は、タンパク質や脂質を分解することができません。

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麹と温度との関係について

麹菌が活性化したり、死滅したりする温度があります。麹菌が生成する酵素にも、作用するのに最適な温度があります。

麹を使って発酵食品を作っていると、よくいただく質問が温度に関するもの。その疑問にお答えしますね。


麹菌の適温は?

『発酵トマトケチャップ』を作るときの温度と発酵時間は次の通り。

〇発酵温度 50~60度
〇発酵時間 12時間以上

50~60度を保って発酵させるのは、糖化させるために最適な温度が60度前後だからです。

一方、麹菌の増殖に適した温度は25~30度。繁殖が止まるのは45度、そして50度前後で死滅します。なんだか矛盾を感じませんか?

50~60度では麹菌そのものは生きていくことができません。『糖化』は、麹菌が発酵の過程で作り出す酵素の働きを利用したものだということがここから分かりますね。


酵素の適温は?

麹菌が作り出す酵素。多くの酵素は60~70度で失活します。活動が止まるとデンプンを分解してくれなくなるので糖ができず、甘くなりません。逆に50度以下でも、酵素の働きは鈍くなってしまいます。

酵素が活発に活動する温度は50~60度。つまり温度が高すぎても低すぎても、NGだということ。

「じょうずに発酵してくれなかった…」という方は、この温度調整に失敗したからなんです。

いわゆる『死菌』にも役割があります!!

「生きた菌を腸に届けたい」と考える方が多いのですが、麹菌を口から摂取した場合、胃酸で溶けると言われています。

そもそも発酵食品が体に良いのは「発酵の過程で有益な成分が生成されていたり、消化しにくい物質が消化されやすくなるから」。生きた菌が腸に届かなくても、ちゃんと効果・効能を得ています。

しかも死菌は、腸に棲みついている乳酸菌のエサになり、腸内環境のバランスを善玉菌優位にします。さらに免疫を高める効果も。死菌にもちゃんと役割がありますので、さほど気にする必要はありません。


発酵時間はあくまでも目安です

私は発酵トマトケチャップを作るとき、炊飯器かヨーグルトメーカーを使っているので、外気温に左右されることはあまりありません。

ところが常温で発酵させる場合、その場所の環境によって発酵時間に差が出ます。季節による温度差、エアコンがあるかないか、日の当たる場所なのか冷暗所なのかなどによって、発酵に要する時間が違ってきます。

発酵食品が出来あがったどうかの見極めは自己判断になるため、完成の状態が分からずに悩むことも。また、できあがり後の状態についても「これって大丈夫なの?」と悩むことがあります。

先ほどご紹介した「発酵トマトケチャップの作り方」の記事や、「手作り『発酵トマトケチャップ』の賞味期限。どのくらい日持ちするの?保存方法って?」を参考にしてくださいね。

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発酵によって得られるメリットって?


最後に、発酵食品にすることのメリットについてみてみましょう。

①消化・吸収がよくなる。
②うまみが加わる。
③栄養価が加わる。
④保存性がよくなる。

①消化・吸収がよくなる

麹菌が生成した酵素は、栄養素を分解します。ある程度分解された状態で摂取されるため、体内での消化・吸収がしやすくなります。

②うまみが加わる

酵素で分解生成されたさまざまな成分は、香りや味を出し、もともとの食材を変身させます。

③栄養価が加わる

先ほども書きましたが、麹菌は代謝の過程でビタミン類を生成します。また、麹の酵素はオリゴ糖を生み出します。

特に豊富に含まれるビタミンB群は、血行と代謝をアップさせてくれます。また、オリゴ糖は腸内細菌である善玉菌のエサとなって繁殖を助けます。

ビタミンB群の効果

〇疲労回復効果 
ビタミンB1
〇成長を促進する効果 
ビタミンB2、ビタミンB6
〇粘膜や皮膚を健康に保つ効果 
ナイアシン
〇エネルギーを生成する効果  
パントテン酸
〇女性の健康を保つ効果 
葉酸
〇血糖値を下げる効果 
ビオチン

④保存性がよくなる

本物の発酵食品は、理論上では「腐らない」と言われています。なぜかというと、発酵菌と腐敗菌では発酵菌のほうが強く、発酵菌でいっぱいになっているところには腐敗菌が入るこむ余地がないからです。これを「菌の拮抗作用」と呼びます。

発酵と腐敗のメカニズムは同じ?!

発酵も腐敗もその仕組みは同じ。与える影響によって呼び方が異なるだけなんです。
〇発酵 微生物が人間に有益な物質をつくりだすこと。
〇腐敗 微生物が人間に有害な物質をつくりだすこと。

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腸内環境を整えることで得られる6つの効果・効能

発酵食品は腸内環境を整えてくれます。腸には栄養素の消化吸収機能に加え、免疫機能があります。「腸活」が流行っている理由として、次の6つの効果・効能が期待できます。

①便秘解消
②肌荒れ&ニキビ改善
③免疫力の向上
④アレルギー改善
⑤ダイエット効果
⑥ストレス緩和

①便秘解消

乳酸菌は腸内を酸性に保ち、悪玉菌の増えにくい環境に整えます。また、腸のぜん動運動を促し、排便回数や排便量などを改善します。

②肌荒れ&ニキビ改善

肌荒れやニキビは、悪玉菌が産生する有害物質が原因。乳酸菌は悪玉菌を減らし、腸の内容物が腐敗するのを防ぎます。

③免疫力の向上

乳酸菌は、免疫細胞の一種である「NK細胞」や「マクロファージ」を活性化させます。免疫力が上がると、風邪やインフルエンザ、発がんリスクの低減などが期待されます。

④アレルギー改善

アレルギー症状は、液性免疫(Th2)が暴走すると起こります。Th2は悪玉菌が増えると優位になるため、乳酸菌で腸内環境を整えることが大切です。

⑤ダイエット効果

悪玉菌が増えると、腐敗物が血液に溶け出して血行を悪化させ、消化吸収の機能を妨げます。腸内環境を整え、基礎代謝を上げます。

⑥ストレス緩和

幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」の約90%が腸に存在しています。セロトニンが増えると、精神状態が安定します。逆に不足すると、慢性的ストレスや疲労、意欲低下、うつ症状、不安感やイライラ感の原因となります。

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まとめ


  • 『発酵トマトケチャップ』ってなに?
    やわらかく煮たトマトと玉ねぎに塩、米麹、水を加えて発酵させたもの。砂糖不使用のケチャップ。
  • 発酵ってなに?
    微生物(酵母・カビ・細菌など)の働きによって、有機物(タンパク質・デンプン・糖など)が分解され、別の物質に変化すること。
  • 麹とは?
    米、麦、大豆などの穀物に麹菌を繁殖させたもの。
  • 麹の役割って?
    酵素を生成する。 
    ②酵母や乳酸菌に必要な栄養源を供給する。
  • 麹と温度との関係について
    〇麹菌が生成する酵素が活発に活動する温度は50~60度。じょうずに発酵を進めるには、この温度を保つことが必要。
    〇一定の温度で麹菌は死滅する。死菌にも役割があるため、発酵食品を加熱することについて、さほど気にする必要はない。
  • 発酵によって得られるメリットって?
    ①消化・吸収がよくなる。
    ②うまみが加わる。
    ③栄養価が加わる。
    ④保存性がよくなる。
  • 腸内環境を整えることで得られる効果・効能
    ①便秘解消
    ②肌荒れ&ニキビ改善
    ③免疫力の向上
    ④アレルギー改善
    ⑤ダイエット効果
    ⑥ストレス緩和



おわりに


『発酵トマトケチャップ』をご存知ですか?砂糖の代わりに米麹で発酵させて甘みを出すので、健康志向の方にピッタリ。砂糖不使用ということに加えて、整腸作用が期待できるのも嬉しいポイントです。

わが家の庭で獲れたたくさんのトマト。「これでケチャップを作ろう!」「せっかくなら発酵させてみよう!!」と思ったのがそもそものはじまり。

もともととても栄養価の高いトマト。それをさらに発酵させることで得られるメリットは大きいです!!栄養価が高まり、効果・効能が増え、保存性が良くなり、そして何よりも旨みが増します。

市販の商品は、材料が遺伝子組み換えだったり、添加物が入っていたりするものが多いです。さらに、大さじ1杯におよそ角砂糖1個分の糖質が含まれています。GI値が高く、血糖値が急激に上がりやすいので注意が必要なんです。

その点、手作りだと原材料にこだわれるうえ、製造過程が目に見えるので、安心していただくことができます。

今回は、発酵時間と温度について書きましたが、いかがでしたか?発酵食品を作る上で麹菌の特性を知ることはとても大切。知識としてもっていると、失敗することも減るんです。

発酵食品を手作りするのはハードルが高そうですが、ポイントをおさえれば、意外と簡単。ぜひチャレンジしてみてくださいね!!




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