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簡単だけど、むずかしい『手作り納豆』。納豆菌の特徴を知ったら、失敗なく作れます!!


誰もが知っている発酵食品と言えば、納豆。もともと栄養価の高い大豆を発酵させることによって、さらにパワーアップ!!

健康にも、美容にも高い効果が得られるうえ、身近な食品ですね。ところが市販の納豆については、いくつかの心配が…。

大量生産をするうえではやむを得ないのですが、原材料である大豆の農薬の問題。大豆だけでなく、納豆菌も遺伝子組み換えが行われているという話も。

私は原材料にこだわりたくて、納豆を手作りするようになりました。手作り納豆の作り方は、シンプル。ところが意外に失敗を重ねてしまったんです。

発酵食品をじょうずに作るためのポイントは

〇発酵のメカニズムを知ること。
〇菌の特徴を押さえること。

実は納豆菌は『最強の菌』と言われています!!今回はそんな納豆菌について、詳しくみていきたいと思います。



納豆の作り方って?


まずは、簡単に作り方をご紹介します。材料は乾燥大豆と市販の納豆。作り方の手順もざっくりですが、2ステップでできちゃいます!!

①大豆をやわらかく煮て
②納豆菌を加えて発酵させるだけ

【材料】

〇大豆 200g
〇市販の納豆 1/4パック

【準備するもの】

〇鍋もしくは圧力鍋
〇ざる
〇ヨーグルトメーカー
〇牛乳パック
〇長い柄のスプーンまたはへら

【作り方】

①大豆を鍋に入れ、たっぷりの水に一晩つけておきます。

思ったよりも水を吸うので、豆の3~4倍量が目安です。

②①の水を捨て、新たに浸るくらいの水を入れて大豆を煮ます。指でつまんでつぶせる固さであればOKです。

③煮えた大豆をざるにあげます。熱いうちに牛乳パックにうつし、市販の納豆を加えてよく混ぜます。

牛乳パックはあらかじめ注ぎ口をはさみでカットし、熱湯消毒しておきます。

④牛乳パックの口をあけた状態でふきんをかぶせ、ヨーグルトメーカーにセットして、カバーをします。

⑤温度と時間を設定してスタートボタンを押します(45度で24時間)。

⑥出来上がったらスプーンでまぜ、牛乳パックの口を閉じて冷蔵庫で保管します。2~3日寝かしたあとが食べごろです。

詳しい作り方は「『手作り納豆』レシピ。作り方はかんたん。2つの材料&2ステップでできちゃいます!!」をご覧ください。

写真付きで説明しています。失敗しないためのポイントもまとめてありますので、ぜひ参考にしてくださいね。



発酵ってなに?


納豆菌の特徴をお話しする前に、まずは発酵について説明しますね。


発酵ってどういうこと?

発酵とは、微生物(酵母・カビ・細菌など)の働きによって、有機物(タンパク質・デンプン・糖など)が分解され、別の物質に変化することをいいます。


発酵食品にするメリットとは?

発酵食品にすると、どんなメリットがあるのでしょうか?発酵の過程で

〇消化・吸収がよくなります。
〇栄養価が加わります。
〇うまみが加わります。
〇保存性がよくなります。

発酵の最大のメリットは「消化・吸収がよくなる」こと。微生物があらかじめデンプンやたんぱく質を分解してくれるので、内臓への負担が軽減します。特に、腸内環境を整えることは、健康を保つ上でとても大切です。


納豆ができるとき、どんなことが起こっているのでしょうか?


納豆菌は増殖するときに大豆のたんぱく質を分解し、吸収しやすくします。その過程でビタミンやナットウキナーゼなどの酵素を作り出し、栄養価を高めるんです。

ちなみに、納豆独特の香りやネバネバは納豆菌がもっているのではなく、発酵過程でできるもの。また、 たんぱく質を分解しておいしさの成分アミノ酸を生成するので、旨味が加わります。

納豆の効果については「『手作り納豆』の効果を詳しく解説!!さらに注目!!市販の納豆との違いって?」を参考にしてください。

発酵は、微生物の働きによるもの。発酵食品をじょうずに作るコツを一言でいうと、発酵菌が活発に働くことができるかどうか?つまり、発酵菌が喜ぶ環境を作ることが大切なんです。

微生物の特徴を知ることが、成功への近道です!!それでは納豆菌について、詳しくみていきましょう。




納豆菌について知ろう!!


納豆菌って?

納豆菌は枯草菌の一種です。田んぼや畑、枯れ草に存在し、特に稲わらに多くくっついています。日本国内だけではなく、熱帯地方や砂漠地帯など、世界中のいたる所に生息しているんです。

納豆菌は、1906年に沢村真農学博士によって発見され、『Bacillus natto Sawamura』と名づけられました。

納豆菌は、採取された環境によって多くの種類があります。まだまだ発見されていないものが、たくさん存在するのだとか。

できあがった納豆のネバネバ具合、風味やにおいなどの違いは、納豆菌の種類によって変わります。つまり納豆菌は、その種類によって異なる性質をもっているということなんです。

国産納豆のほとんどは、「宮城野菌」「成瀬菌」「高橋菌」の3種類が使われています。国内三大納豆菌種と呼ばれていて、明治45年に納豆から分離された菌株の派生です。


納豆菌には2種類の「カタチ」があるんです!!

納豆菌の大きさは数ミクロン(1/1000㎜=1μm)。納豆の糸を光学顕微鏡で観察すると、次の2タイプが混在していることが確認できます。

①細長い楕円の形をした栄養細胞
②粒状の胞子

②の胞子は、「芽胞(がほう)」と呼ばれています。栄養細胞と胞子は、環境によってカタチを変えているだけで、実は同じ納豆菌です。

引用:納豆菌を見てみよう(2) : Web247 (livedoor.jp)

①活動時には栄養細胞のカタチに!!

納豆菌が活性化して、大豆を分解しているときに働くのが栄養細胞。どんどん分裂・増殖して数珠つなぎになり、発酵を進めます。

②休眠時には胞子のカタチに!!

環境が生息不可能な状態になると、栄養細胞は殻に閉じこもるように胞子の姿へ変化します。

胞子になった納豆菌は、乾燥にも熱にも非常に強く、プラスマイナス100℃の環境にも耐え、何千年も生き残ることができると言われています。

一言でいうと納豆菌は、働くときは栄養細胞のカタチに、身をまもるときは胞子のカタチに変化するということなんですね。



納豆菌の特徴って?


納豆菌の大きな特徴は

①生命力が強い!!
②納豆菌が活性化する温度は40度。
③好気性であること。

順番にみていきましょう。


納豆菌の特徴① 生命力が強い!!

納豆菌は、ほかの発酵菌にくらべて生命力がとても強く、死滅しにくいと言われています。なぜなら、次の特徴があるからなんです。

〇高温、低温に耐えることができる。
〇酸やアルカリに強い耐性をもっている。

また、その繁殖力も驚異的。麹菌や乳酸菌、イースト菌の繁殖を妨げてしまう可能性があることから、日本酒の蔵元さんなどは、醸造中は納豆を控えるようにしているのだとか。

納豆菌はなぜ、このような過酷な環境下でも生き延びることができるのでしょうか?それは先ほど説明したように、納豆菌が環境によってカタチを変えることができるからなんです。

枯草菌は生きる環境が厳しくなると芽胞状となります。環境がよくなると芽胞の中から栄養型細胞が発芽し、また分裂を始めます。

「芽胞」とは自らを守るシェルターのようなもの。これにより、放射線・紫外線にも耐え、真空状態でも生き残ると言われています。もう少し詳しく説明しましょう。

〇高温、低温に耐える

たいていの菌は、高温だと死滅してしまいます。それに比べて納豆菌は、高温に強く100℃でも死滅しません。納豆菌を死滅させるためには、120℃の温度が必要です。低温にも強くマイナス100℃でも死滅しないんです。

熱に弱いナットウキナーゼ

納豆菌は熱に強いのですが、発酵過程で生成されるナットウキナーゼなどの活性酵素は熱に弱いんです。

酵素以外の栄養素は加熱してもこわれないので、参考にしてくださいね。

〇酸やアルカリに強い耐性をもつ

さらに酸やアルカリにも強いので、pH1.0~10.0の環境下で生き延びることができます。 そのため胃酸に溶けることなく、生きて腸に届くんです。


②納豆菌が活性化する温度は40度

発酵には適した温度があります。なぜなら、発酵菌によって活性化する温度が決まっているから。発酵菌が活性化しないと分解が進まないため、発酵も不十分になります。

納豆菌が最も活発に働く温度は40度。低すぎても高すぎてもダメなんです。


③好気性であること

納豆菌は「好気性」です。つまり、発酵させるには適量の空気が必要だということ。納豆のパックに穴が開いているのは、発酵の際に納豆菌が呼吸するためなんです。

空気が必要なことについて、参考になる研究結果がありましたので載せますね。

内容積約22.5lのデシケーターに煮豆充填PSP容器 を入れ発酵させた場合の発酵後の納豆の状態とデシケー タ内の酸素濃度は下記のようであった。

 デシケータによる発酵結果 
①煮豆重量 (g)  ②酸素濃度 (%) ③納豆の性状 
①113  ②12.2  ③問題なし 
①354  ②  4.5  ③ 問題なし 
①506  ②  1.8  ③やや糸に透明感。煮豆様の甘い香
①994  ②  0.4  ③糸ごく弱く切れやすい。素豆はない。 

この結果から納豆として認められる程度の発酵をするためには、煮豆100gあたり5~6l程度の空気が必要である ことがわかった。また,発酵後の酸素濃度が2%を下回る と品質に影響が出るようである。

http://www.itic.pref.ibaraki.jp/periodical/reseach/28/N28P088.pdf



『手作り納豆』をじょうずに作るには?


発酵のメカニズムと納豆菌の特徴を考え、納豆を手作りするときに気をつけるポイントは、次の3点です。

①しっかりと混ぜて納豆菌を大豆に付着させる。
②牛乳パックの口は閉めずにキッチンペーパーを輪ゴムでとめ、空気が通るように工夫する。
③納豆菌が活性化するように、40度10時間をキープする。


ポイント① しっかりと混ぜて、大豆に納豆菌を付着させる

茹で上がった大豆に市販の納豆菌を投入したあと、よく混ぜ合わせてください。

特に、冷蔵庫から出したばかりの納豆は固まっていることが多く、大豆と混ざりあうまで意外と時間がかかります。

かき混ぜたあと、全体がちゃんとぬるぬるしているかをていねいに確認しましょう。


ポイント② 牛乳パックの口は閉めずにキッチンペーパーを輪ゴムでとめ、空気が通るように工夫する

ちゃんと空気が入るよう、大豆と納豆を入れた牛乳パックは口を閉じずにふきんをかけて、ヨーグルトメーカーや炊飯器にセットします。

キッチンペーパーをかぶせて、輪ゴムで止める方法もあります。また、ヨーグルトメーカーの外カバーを少しずらして空気の通りみちを作っておきましょう。


ポイント③ 納豆菌が活性化するように、40度10時間をキープする

発酵が進みやすいように、納豆菌がもっとも働く40度をキープします。発酵食品をつくるときに、温度管理は一番のキーポイントです。



まとめ


  • 納豆菌について知ろう!!
    〇納豆菌は枯草菌の一種である。
    〇土や枯れ草、稲わらに存在している。
    〇世界中のいたる所に生息している。
    〇納豆菌には種類がある。

    〇納豆菌には2種類のカタチがある。
    ①細長い楕円の形をした栄養細胞
    →活動時には栄養細胞のカタチになって発酵に携わる。
    ②「芽胞(がほう)」と呼ばれる粒状の胞子
    →休眠時には胞子のカタチになって環境から身を守る。
  • 納豆菌の特徴って?
    ①生命力が強い!!
    〇高温、低温に耐える。
    〇酸やアルカリに強い耐性をもつ。

    ②納豆菌が活性化する温度は40度。

    ③好気性であること。
  • 『手作り納豆』をじょうずに作るには?
    〇納豆菌がきちんと混ぜること。
    〇空気にふれさせること。
    〇納豆菌が活性化する温度をキープすること。



おわりに


納豆菌の特徴について、詳しくみてきましたが、いかがでしたか?身近な納豆ですが、意外に知られていないことも多かったのではないでしょうか?

知れば知るほど、魅力的な納豆。発酵のメカニズムと納豆菌の特徴をおさえれば、失敗なく作ることができますよ。

手作りだと、材料も製法も目に見えるので、安心ですね。ぜひ挑戦してみてください!!

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