「がん」とはどんな病気?基礎知識や治療方法などをわかりやすくまとめました
日本は諸外国に比べてがんの発症率が上がっていると言われており、国民の2人に1人が罹患する身近な病気です。告知を受けた多くの人は死をイメージし、恐れや不安を抱くと言われています。
ところが、実はがんについての詳しい情報を知らない方も多いのです。がんとは何か?どのようにして発症するのか?その原因とは?治療方法は?…など、まずは情報を知って冷静になることが大切です。
今回はがんについてわかりやすく説明したいと思います。
この記事の目次
- 1.「がん」とは?
- 2.がんの種類と特徴
- 3.がんはこうして発生します
- 4.がんの4つの治療方法
- 5.がんの発生要因って?
- 6.がんが好む環境とは?
- 7.まとめ
- 8.おわりに
「がん」とは?
三大疾病の一つである「がん」
日本人の病気による死因上位3位を三大疾病と呼び、がん・心疾患・脳卒中がこれに当たります。国立がん研究センターによる2018年のデータでは、日本人が一生のうちにがんと診断される確率は男性65.0%、女性50.2%であり、2人に1人がかかる身近な病気だと言われています。
ただし、この数字はあくまでも一生涯でみた場合の数字。例えば男性だと60歳までの罹患率は7%で、10人に1人以下の確率です。
ちなみにがんによって死亡する確率は、男性が26.7%、女性が17.9%。罹患率に比べると、低い数値となっています。
日本人の死因は?
がん(悪性新生物) 26.5%
心疾患(急性心筋梗塞) 14.9%
老衰 10.6%
脳卒中(脳血管疾患) 7.3%
肺炎5.1%
厚生労働省の「人口動態統計(確定数)」(2021年)より
5年生存率の改善
一昔前までがんは「死につながる怖い病気」だというイメージでしたが、医学の進歩によって年生存率が改善されてきました。
国立がん研究センターのデータによると、5年生存率の推移は1963年から1998年の25年間で、男性29.5%→58.8%、女性50.5%→66%と変化しています。
がんの種類と特徴
固形がんと血液がん
がんは、どの細胞に発生するかによって固形がんと血液がんに大別され、固形がんはさらに、癌腫と肉腫とに分けられます。
固形がんは、臓器や組織などで腫瘍ができるがんであり、血液がんは、造血組織の異常によって発生するがんです。
①固形がん
〇癌腫
上皮細胞( 内臓や皮膚、粘膜などを作る細胞)にできる
〇肉腫
非上皮性細胞(骨や筋肉などを作る細胞)にできる
②血液がん
血球にできる
〇主な癌腫
咽頭癌、喉頭癌、舌癌、肺癌、乳癌、胃癌、大腸癌、子宮癌、卵巣癌、肝臓癌、膵臓癌、胆嚢癌、腎臓癌、前立腺癌、甲状腺癌など
〇主な肉腫
骨肉腫、軟骨肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、血管肉腫、繊維肉腫、白血病や悪性リンパ腫、骨髄腫など
〇主な血液がん
白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫など
唯一、がんが発生しない臓器とは?
答えは心臓。臓器のうち唯一がんにかからない場所なんです。
固形がんと血液がんの特徴は?
固形がん、血液がんにはそれぞれ次のような特徴があります。
①固形がん
〇かたまりで増える
〇周囲の細胞にしみしみこむように広がる(浸潤)
〇体のあちこちに新しいがんのかたまりを作る(転移)
②血液がん
〇かたまりを作らずに増える
血液がんでも、悪性リンパ腫の場合はかたまりができ、リンパ節などが腫れることがあります。
良性腫瘍と悪性腫瘍
腫瘍とは、カラダにできた細胞の塊のこと。腫瘍には良性腫瘍と悪性腫瘍とがあり、がんは「悪性腫瘍」と呼ばれています。
〇良性腫瘍
・浸潤や転移をせず、ゆっくりと増える腫瘍
〇悪性腫瘍
・周囲の組織への浸潤や転移が起きる腫瘍
・増殖スピードが速い
・悪液質になりやすい
良性腫瘍は悪性腫瘍に変化することもあるので、治療をするかどうかなどについては、主治医とよく相談しましょう。
悪液質とは?
がん細胞が作り出すサイトカインという物質によって食欲減退、筋肉量の減少が起こります。また、何もしなくてもエネルギーが消費される状態に。その結果、体重が減ったり寝たきりの状態になったりします。進行がんの40~80%にみられると言われています。
がん細胞が悪性と言われるのはなぜ?
私たちのカラダを作る細胞は、正常な状態であれば、一定の数を保っています。ところががん細胞は、そのバランスを無視して勝手に増え続けます。
がん細胞がどんどん増えることで、生きるために絶対に必要な臓器の機能が低下し、生命を維持できなくなる場合があります。
周囲の正常な組織に侵入してその組織を壊し、血管やリンパ管を通ってカラダのあちらこちらへ広がり、またそこで悪さをするのです。しまいには、正常組織が摂取しようとする栄養をどんどん取ってしまい、体を衰弱させ、死にいたらしめます。
がん細胞は、健康な人の体でも作られています!!
実は、がん細胞は健康な人の体の中でも1日数千個つくられていて、カラダの免疫力により退治されています。免疫力が落ちると、そのがん細胞を退治できなくなってしまうんです。
がんはこうして発生します
「がん細胞」とは?
がん細胞は、私たちの体を作る細胞が変異したもの。正常な細胞の遺伝子2個から10個程度に傷がつくことで、がん細胞に変わると言われています。
どうやってがん細胞ができるの?
私たちの体は約60兆個の細胞からできています。がん細胞は、正常な細胞の遺伝子に傷がつくことで起こります。つまり、カラダの外からがんが入ってくるのではなく、カラダの中の正常な細胞ががん細胞に変わるということ。
細胞の遺伝子の傷は一度にできるのではなく、長い時間をかけて、徐々にできていきます。年をとるにつれて遺伝子の傷が増え、それに伴い、がん細胞がつくられる数も増えていく…ということなんです。
がんの4つの治療方法
現在、医療的ながんの治療は次の方法で行われ、がんの四大治療法と呼ばれています。2つ以上の治療を合わせて行うこともあります。
①手術
②放射線治療
③抗がん剤治療
④免疫療法
がん治療は基本的に、がんの進み具合であるステージに応じて行われたり、各臓器ごとのガイドラインに沿って行われたりしています。
①手術
外科手術によって、がんを切除する治療方法。浸潤・転移があると診断された場合は、周辺組織やリンパ節も切除します。メリットとデメリットは次の通りです。
〇メリット
・すべてのがんを取り除くことができれば、完治が期待できる
〇デメリット
・身体にメスを入れるため、治癒や全身の回復に時間がかかる
・万が一がんを取り切れなかった場合に再発の可能性がある
最近では、切除する範囲を最小限にとどめる縮小手術や腹腔鏡手術、胸腔鏡下手術など、身体への負担を 少なくする手術の普及が進んでいます。
②放射線治療
放射線をがんに照射してがん細胞の増殖を防ぎ、細胞を殺して治療します。放射線は、細胞分裂を活発に行う細胞を殺しやすいという性質をもっています。
増殖スピードが速いがん細胞は、正常な細胞よりも放射能の影響を受けやすいのです。つまり、正常な細胞に影響を与えにくいというメリットがあります。
③抗がん剤治療
抗がん剤治療は、化学物質を点滴や飲み薬で投与し、がん細胞の分裂を抑えたり破壊したりする治療法です。化学物質が血液によって全身に運ばれ、身体の隅々に潜むがん細胞を攻撃します。手術や放射線治療といった局所治療と併用して行われることが多い治療法です。
④免疫療法
免疫療法は、人が持つ免疫力を高めることでがん細胞を排除する治療法。免疫チェックポイント阻害剤であるニボルマブという薬が代表的です。抗がん剤治療同様、全身に治療の効果が及びます。
現在、免疫療法の保険診療の範囲は一部のがんの種類に限られていますが、今後適用範囲の拡大が期待されており、これまで一般的であった手術・放射線治療・抗がん剤治療に続き、新たな治療法として注目されています。
その他の療法
4つの治療方法のほかにも、世の中には多くの民間療法があります。SNSなどで多くの情報を得ることができるようになりました。患者さんによる体験談なども参考になるでしょう。
一方で、情報過多だという見方もあります。何の情報が正しいのか?どのような治療方法が自分に合っているのか?情報を取捨選択していく知見が求められています。
がんの発生要因って?
主ながんの発生要因は、大きく分けて次の2つであると言われています。
①生活習慣
②感染
国立がん研究センターによると、日本人が罹患する原因は、男性の約53.3%・女性の約27.8%が生活習慣や感染であると考えられているそうです。そのうち多くを占めるのが、男性約23.6%・女性約4.0%の喫煙と男性約18.1%・女性約14.7%の感染です。
がんの原因となる生活習慣とは、喫煙、飲酒、食物・栄養、運動、体格の5つが挙げられるでしょう。 これらすべてを見直すと、 がんになるリスクは男性で43%、女性で37%低くなるという研究結果があります。
また、感染症ががんの原因となるのは、ウイルスや菌が体内に入ると細胞が炎症を起こし「炎症→変成→がん」という順番をたどるからです。
ウイルスや菌が侵入しても、免疫系がしっかりしている人であれば問題なく処理できますが、侵入したものの種類よっては、体内で対処できないパターンがあります。
がんが好む環境とは?
がんが好む環境とは?
がんが好む環境とは、どのようなものなのでしょうか?
〇低温
〇低酸素(がんは酸素を必要としない)
〇酸性環境
〇乳酸
これに加え、がんは脂肪とたんぱく質だけの環境でも生存可能です。
がんの栄養(エサ)って?
がんは、ブトウ糖を発酵させたものをエサとしていること、ケトン体はエサにできないことが特徴です。また、がんは低エネルギー細胞のため、正常細胞の3~8倍のブドウ糖が必要ともされています。これらの条件がそろったために、がんがどんどん増え続けていると考えられているんです。
予防やがん細胞の増殖を防ぐ対策として、これらの情報は大いに役立つでしょう。詳しくは『 』を参考にしてください。
まとめ
- がんとは?
三大疾病(がん・心疾患・脳卒中 )のうちのひとつ - がんと診断される確率は?
男性65.0%、女性50.2% - がんによって死亡する確率は?
男性26.7%、女性17.9% - 5年生存率の推移(1963年から1998年の25年間)
男性29.5%→58.8%、女性50.5%→66% - がんの種類
①固形がん
〇癌腫
上皮細胞( 内臓や皮膚、粘膜などを作る細胞)にできる
〇肉腫
非上皮性細胞(骨や筋肉などを作る細胞)にできる
②血液がん
血球にできる - 良性腫瘍と悪性腫瘍
〇良性腫瘍
・浸潤や転移をせず、ゆっくりと増える腫瘍
〇悪性腫瘍
・周囲の組織への浸潤や転移が起きる腫瘍
・増殖スピードが速い
・悪液質になりやすい - がん細胞とは?
私たちの体を作る細胞が変異したもの
正常な細胞の遺伝子2個から10個程度に傷がつくことで、がん細胞に変わる - がんの四大治療法
①手術
②放射線治療
③抗がん剤治療
④免疫療法 - がんの発生要因
①生活習慣
②感染 - がんが好む環境
〇低温
〇低酸素(がんは酸素を必要としない)
〇酸性環境
〇乳酸 - がんのエサは?
糖
おわりに
「がん」と聞いて、死をイメージする方が多いのではないでしょうか?2人に1人がかかる病気だと言われるほど身近な病気なのですが、正しい知識をご存知の方は意外と少ないのです。
昔から「病は気から」と言われるように、ストレスはより病気を進行させてしまいます。どのような病気なのか?がん細胞の特徴は?正しい情報を知ることで、冷静に病気を捉え、適切な判断をすることができるようになります。
できるだけ分かりやすくがんについてお伝えしました。ぜひ参考にしてくださいね。
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