マイクロバイオームとは?ヒトと共生する微生物と健康や疾患との深い関係を分かりやすく&かんたんに説明します!!

マイクロバイオームという言葉を聞いたことがありますか?ヒトの体には無数の微生物が存在していて、共生しています。その微生物は身体の各部位ごとに集合体を作っており、それぞれの微生物叢は個々人によって違います。

近年の研究で、マイクロバイオームが健康や疾患と密接な関わりがあることが明らかとなり、医学的な予防や治療として注目されているんです。



マイクロバイオームとは?


マイクロバイオームとは、生物(ヒト、動物、植物など)や環境(土壌、水、大気など)に存在する微生物の集合体。マイクローブ(微生物)の集合体(オーム)という意味です。

ヒトの場合は、体に共生する微生物の総体のこと。消化器・皮膚・口腔・鼻腔・呼吸器・生殖器など人体の内部や外部のあらゆる場所に、 それぞれ特有の微生物叢を形成しています。

微生物とは?

細菌・真菌(カビの仲間)・古細菌・ウイルスなど



マイクロバイオームは人それぞれ


ヒトマイクロバイオームの多様性

マイクロバイオームは人それぞれ違っていて、同じマイクロバイオームをもつ人間は存在しません。遺伝や年齢、環境やライフスタイル、食事などに左右されるからです。また、同じ人物であってもこれらの影響によって、短時間で変化すると言われています。


腸内マイクロバイオーム

私たちの体重の約3%は微生物で、これらの微生物は体内に侵入してくる病原菌と区別して常在菌と呼ばれており、 およそ1000種・数十兆個が生息していると言われています。

消化器・皮膚・口腔・鼻腔・呼吸器・生殖器など人体の内部や外部のあらゆる場所に棲息。そのうち99.9%以上が腸にいて、微生物叢を形成しているんです。腸管内のマイクロバイオームが、腸内フローラ(腸内細菌叢)と呼ばれています。

腸内マイクロバイオームは主に大腸に存在。消化、栄養吸収、免疫調節、病原体からの保護などに関与しているため、腸内菌叢が変化すると健康に影響を及ぼします。

腸内フローラとは?

腸内細菌の菌種は約1,000種類と、多種多様。 同じ種類の菌たちが塊となり、腸壁にびっしり張り付いています。その様子がお花畑 (flora)にみえることから腸内フローラと呼ばれるようになりました。


腸内フローラの原型は3歳までに作られる?!

子宮内は無菌環境であり、細菌定着は出生時に始まると考えられています。 赤ちゃんは産道を通るときに、母親から腸内細菌をもらいます。

それが赤ちゃんの腸内で増殖し、3歳くらいまでに腸内フローラの原型が作られます。そのパターンは一生変わらないと言われているんです。

腸内細菌の形成パターンは、一人ひとり異なります。「腸内フローラが整っている」とは、腸内細菌のバランスがとれている状態のことを指します。



日本人の腸内細菌


日本人の腸内に多いのはビフィズス菌

遺伝や年齢、環境やライフスタイル、食事などに左右されるマイクロバイオーム。世界各国の食文化や生活習慣を反映した菌叢になっているんです。

日本人は、どのような菌がどのくらいの数存在しているのでしょうか?腸内フローラのメタゲノム解析によると、ビフィズス菌ブラウティア菌などが多いことが報告されています。

さらに、ビフィズス菌のなかでもビフィドバクテリウム属ブラウチア属の細菌が多いことが特徴のひとつ。欧米人の腸にビフィズス菌はほとんどいません。

逆に、他国では普通にみかける古細菌であるメタノブレビバクター属が目立って少ないんです。不思議なことに、隣国の中国よりも欧米のタイプに近いことも分かっています。

国内においても、地域によって特徴が。長寿で知られる奄美諸島では、高齢者になると減少するビフィズス菌の数が高い数値で保たれていました。


日本人の特徴

世界的にみて、日本人の腸内細菌叢は独特だと言われており、次のような特徴があります。

①古細菌が少ない
②炭水化物(食物繊維)を栄養素とする代謝機能が優れている
③海苔やワカメを分解できる腸内細菌が存在している
④酢酸を作り出す腸内細菌が多い
⑤おならが臭くない
⑥先進国のなかで太りすぎの人の割合が少ない
⑦薬剤の影響を受けやすい

これらの特徴が現れる理由の一つとして挙げられるのが、食物繊維を多く摂取してきた日本特有の食文化。ところが近年、食生活の欧米化がすすみ、腸内細菌叢に影響を与えていると言われています。


腸内細菌叢が影響を受けやすい要因とは?

最近の研究において、日本人の腸内細菌叢が最も影響を受けやすい要因が薬剤であることが明らかになりました。薬剤投与数が増えると、多様な菌種が減少することが分かっています。これは、生活習慣、食習慣や運動習慣の3倍以上であると言われています。

腸内細菌叢が影響を受けやすい要因順位

1位
薬剤
2位
疾患
3位
年齢・性別・BMI
4位
生活習慣・食習慣・運動習慣



健康に影響を与えるマイクロバイオーム


ヒトマイクロバイオームが健康に関与している?

近年、次世代シーケンサーなどの分析技術の進歩によってマイクロバイオームの解析が進み、 常在菌といわれる微生物叢が健康や疾患に密接に関係することが分かってきました。

ヒトの遺伝子の総数は2万2千個ほどですが、腸内細菌由来のものは1000万個を超す遺伝子が見つかっています。菌叢全体の遺伝子がヒトゲノムよりも多様性に富んでいるのではないかとされ、研究が進んでいるところです。


腸内細菌叢の変化の原因

腸内細菌叢が変化する要因には、服薬、疾患、加齢、身体的特徴、生活習慣、食習慣、運動習慣などが挙げられます。腸内細菌の変化は健康にも影響を及ぼすと考えられているので、腸内環境を整えることは非常に重要です。


マイクロバイオームと疾患

マイクロバイオームの乱れは、次のような疾患の発症リスクに関与している可能性があると言われています。


〇不眠
〇うつ病
〇自閉症
〇パーキンソン病
〇動脈硬化
〇糖尿病
〇アレルギー
〇アトピー性皮膚炎
〇がん
〇パーキンソン病
〇リウマチ
〇炎症性腸疾患
〇肥満
〇クローン病
〇動脈硬化
など


疾患の治療や予防にマイクロバイオームを!

疾患と密接な関係があると言われるマイクロバイオームですが、近年、 糞便微生物移植法など疾患の治療に用いるアプローチが注目されています。患者一人ひとりに対して、最適なマイクロバイオームを維持・回復する方法。研究が進むにつれ、予防的な見地からも期待が高まっているんです。



『腸活』のすすめ


人の体に多く存在する微生物。その中で最も多く生息している場所が腸管でした。テレビや雑誌などのメディアでも『腸活』が取り上げられることが多くなっています。腸を整えるにはどうすればいいのでしょうか?


腸が整っている状態とは?

「腸内フローラが整っている」とは、腸内細菌のバランスがとれている状態のこと。腸内細菌は「善玉菌・悪玉菌・日和見菌」の3つに分類されます。理想的な割合は、善玉菌:悪玉菌:日和見菌= 2:1:7だと言われています。

〇善玉菌
悪玉菌の侵入や増殖を防ぎ、腸の運動を促す菌

〇悪玉菌
腸内で有害物質を作り出し、お腹の調子を悪くする菌

〇日和見菌
善玉菌と悪玉菌のうち、数が多いほうの味方につく菌

〇善玉菌

善玉菌は腸内で発酵活動を行います。乳酸や酢酸を作り出して腸内を弱酸性に保ち、悪玉菌の増殖を抑えます。代表的なのは、ビフィズス菌や乳酸菌などです。

〇悪玉菌

悪玉菌は腸の中で腐敗活動を行います。毒性物質を作り出して腸内をアルカリ性にします。代表的なのは、大腸菌(毒性株)やウェルシュ菌、ブドウ球菌などです。

一見悪者に感じますが、肉類などのタンパク質を分解して、便として処理排泄するという大切な働きもあります。あくまでもバランスが大切なんです。

〇日和見菌

善玉菌が増えると日和見菌は善玉菌の味方につくので、腸内環境を整えておくことが大切だと言われる理由がここにあります。

発酵と腐敗のメカニズムは同じ?!

発酵も腐敗もその仕組みは同じ。与える影響によって呼び方が異なるだけなんです。
〇発酵 微生物が人間に有益な物質をつくりだすこと。
〇腐敗 微生物が人間に有害な物質をつくりだすこと。


腸内環境を判断するには?

腸内環境が悪化しているかどうかを判断する際に、一番わかりやすいのは便。色や形、においをみます。まずは便秘や下痢をする方が多いです。また、お腹にガスがたまってハリ感が強くなったり、おならやゲップが増えたりする方もいます。

悪化した腸内環境とは、悪玉菌が増えて腸内細菌のバランスが崩れた状態のこと。悪玉菌が生み出した毒素は、血液にのって全身を巡ってしまいます。

口から入った食べ物が便として排泄されるまでの時間は24~72時間だといわれています。 つまり便は1~3日前に食べたものに影響されていますので、チェックの目安にしてください。


腸を整えるには?

腸内環境は食事や運動、睡眠などの影響を受けます。腸内フローラのバランスを保つには

〇自律神経を整える
〇生活習慣を整える

がポイントです。「生活習慣を整える」については、①善玉菌を増やす食事への配慮、②質の良い睡眠、③適度な運動の三点を見直しましょう。

『腸活』について詳しくは次の記事を参考にしてください↓↓

腸を整えるには?腸内環境の状態はどう判断するの?『腸活』の2つの方法って?



まとめ


  • マイクロバイオームとは?
    〇生物(ヒト、動物、植物など)や環境(土壌、水、大気など)に存在する微生物の集合体
    〇人体の内部や外部のあらゆる場所に、 それぞれ特有の微生物叢を形成
  • ヒトマイクロバイオームの多様性
    〇人それぞれ違っていて、同じマイクロバイオームをもつ人間は存在し ない
    〇同じ人物であっても短時間で変化する
  • 腸内マイクロバイオーム
    〇常在菌の99.9%以上が腸にいて、微生物叢を形成している
    〇腸管内のマイクロバイオームは腸内フローラ(腸内細菌叢)と呼ばれている
    〇腸内細菌の形成パターンは、一人ひとり異なる
  • 日本人の腸内細菌の特徴
    〇ビフィズス菌やブラウティア菌などが多い
    〇ビフィズス菌のなかでもビフィドバクテリウム属とブラウチア属の細菌が多い
    〇古細菌が少ない
    〇炭水化物(食物繊維)を栄養素とする代謝機能が優れている
    〇海苔やワカメを分解できる腸内細菌が存在している
    〇酢酸を作り出す腸内細菌が多い
    〇おならが臭くない
    〇先進国のなかで太りすぎの人の割合が少ない
    〇薬剤の影響を受けやすい
  • 常在菌といわれる微生物叢が 健康や疾患に密接に関係する
    マイクロバイオームの乱れは様々な疾患の発症リスクに関与している
  • マイクロバイオームが疾患の治療や予防に
  • 腸活のススメ
    〇自律神経を整える
    〇生活習慣を整える



おわりに


ヒトの体には、内側にも外側にも数えきれないほどの微生物が生息していて、それぞれが菌叢を形成しています。マイクロバイオームは一人ひとり違っていて、私たちの健康と密接に関わっているんです。

最近の研究によって解明されつつあるマイクロバイオーム。目に見えない微生物たちのチカラが疾患の治療や予防としてクローズアップされつつあります。

マイクロバイオームの9割以上を占めるのが腸管。『腸活』がテレビや雑誌などのメディアで取り上げられ、腸内環境を整えることの大切さが注目されるようになりました。

今回の記事を参考に、ぜひ腸活してみてくださいね。


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