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経皮吸収のメカニズムを利用した「経皮吸収型製剤」。6つのメリットと4つのデメリットとは?


「経皮吸収」とは、皮膚から物質を取り込むこと。物質が口から入る「経口吸収」は8%、皮膚から入る「経皮吸収」は7%。実はさほど変わりません。

皮膚から有害な合成化学物質を取り込んでしまうことを「経皮毒」と言います。シャンプーやリンス、家庭用洗剤などに含まれる成分をみて、日用品を選ぶ方も増えてきました。

この経皮吸収を、上手に利用しようという動きもあります。気管支拡張剤などの医療用パッチシールが代表的ですね。

また、経皮吸収マグネシウムやアロマ、よもぎ蒸しなどカラダに良い成分を皮膚から取り入れるという視点も。今回はその中で「経皮吸収型製剤」の利用について見ていきましょう。

「経皮毒」については、こちらの記事を参考にしてください↓↓

経皮吸収とは?知っておきたい「経皮毒」。経皮吸収率やメカニズム、日用品の選び方、気をつけたい合成化学物質もお伝えします!!



経皮吸収とは?


私たちは、次の3つの方法で物質を体内に取り入れています。

①経口吸収
口から食べ物を取り入れる

②経気道吸収
呼吸により取り入れられる

③経皮吸収
皮膚から吸収される


経皮吸収とは?

物質が皮膚を通して体内に吸収されること。皮膚から吸収されたものは、角質層(表皮)から真皮へと浸透していきます。経皮吸収には次の2つの経路があります。

①経附属器官経路
②経角層経路

「① 経附属器官経路」はさらに、次の2通りがあります。
〇毛穴(毛嚢)から吸収
〇汗腺から吸収

「② 経角層経路」にも、次の2通りがあります。
〇細胞間経路(細胞と細胞の間を通って吸収)
〇細胞内経路(細胞内を通過して吸収)


カラダの部位によって違う吸収率

経皮吸収率は、カラダの部位によって異なります。腕の吸収率を1とした場合の数値は次の通り。デリケートゾーンの吸収率の高さが際立っていることが分かります。

足の裏 0.14
手の掌 0.83
背中 1.7
頭部 3.5
脇の下 3.7
おでこ 6.0
頬 13.0
男性の陰嚢 42.0
女性の陰部 50.0


温度による経皮吸収量

経皮からの吸収量は、温度によっても変わります。皮膚温度が10度から37度に上がると、吸収量は10倍になると言われています。



「経皮吸収型製剤」とは?


経皮吸収型製剤とは?

医療現場では、「経皮吸収型製剤」が使用されています。 吸収型製剤とは薬剤を含んだ貼り薬で、薬を皮膚から吸収させて体内に導くものです。


貼り薬(貼付剤)との違いって?

湿布などの貼り薬は、貼った部位にのみ薬効があります。一方、内服薬に近い働きをするのが経皮吸収型製剤です。

経皮吸収型製剤は貼った部位から有効成分が浸透して血管内に入り、血液の流れにのって全身に作用します。

〇貼り薬
貼った部位にのみ薬効がある

〇経皮吸収型製剤
全身に薬効がある


経皮吸収型製剤にはどんなものがあるの?

現在よく使われている経皮吸収型製剤には次のようなものがあります。

①ニコチンパッチ
②ホルモン製剤
③喘息パッチ
④狭心症治療薬
⑤麻薬鎮痛剤

①ニコチンパッチ
禁煙外来で使われる禁煙補助剤で、腕に貼ります。低レベルのニコチンを体内に入れることで禁煙時のイライラなどを緩和し、禁煙をサポートします。

②ホルモン製剤
女性ホルモンを補充するテープ剤で、下腹部に貼ります。更年期障害時の辛い症状を緩和する目的で使われることが多いです。

③喘息パッチ
気管支拡張剤で、胸か背中、上腕のいずれかに貼ります。 喘息は気管支が収縮することで呼吸困難を起こします。気管支パッチを張ることで気管支を広げ、空気を通りやすくします。

④狭心症治療薬
心臓発作を抑えるための血管拡張薬で、胸部か背部、上腹部のいずれかに貼ります。動脈を広げたり痙攣を抑えるなどの効果があります。

⑤鎮痛剤パッチ
麻薬製剤は、癌治療などに用いられます。湿布と違って痛い部位に貼るのではなく、胸部や腹部、上腕部や大腿部などに貼付します。



経皮吸収型製剤のメリットとは?


投薬と言えば、まず思い浮かぶのは口から摂取する内服薬ですね。経皮吸収を利用した「経皮吸収型製剤」には、どのようなメリットがあるのでしょうか?

①扱いが簡単である
②経口摂取が困難な人にも投薬できる
③薬効を長時間一定に保つ
④はがすことで薬効を中断できる
⑤副作用が軽減される 
⑥初回通過効果を避けることができる


①扱いが簡単である

経皮吸収型製剤は、小さい子どもからお年寄りまで幅広い年齢の方々に使用されています。一番の理由は、扱いが簡単だということ。

皮膚に貼るだけなので、薬が苦手なお子さんや、嚥下が苦手な高齢者でも手軽に使うことができます。注射や点滴と違って通院の必要もなく、行動を束縛されないこともメリット。

外用薬なので、投与しているかどうかを目で確認できるというのも利便性の一つですね。


②経口摂取が困難な人にも投薬できる

子育てをされた方は経験があると思いますが、小さい子に薬を飲ませるのは一苦労です。嫌がって口を開けてくれなかったり、飲み込めずに吐き出してしまったり。

また、嚥下機能が低下した高齢者にとっても、経口摂取でなくパッチで薬を投与できるのはありがたいですね。点滴で針を刺すのが辛いと感じる方にも有効です。


③薬効を長時間一定に保つ

経皮吸収型製剤は、吸収速度を制御することができます。薬剤がゆっくり浸透していくので、血中薬物濃度を長時間一定に保つことができます。


④はがすことで薬効を中断できる

経皮吸収型製剤は外用薬なので、内服薬と違ってはがすことができます。投与後の体調をみて投与を中断することができるのは、大きなメリットです。


⑤副作用が軽減される 

内服薬は口から摂取して消化管を通ります。薬の種類によっては、胃などを荒らしてしまうことがあります。その点経皮吸収型製剤は皮膚から投与するため、消化管障害などの副作用を心配せずに済むのです。


⑥初回通過効果を避けることができる

経口摂取した薬は腸で吸収され、血流に乗って肝臓に送られます。肝臓では酵素によって薬物が代謝されるため、薬効が落ちる可能性があるんです。

これを「初回通過効果」といいます。経皮吸収型薬剤は肝臓を通らないため、初回通過効果の心配がありません。



経皮吸収型製剤のデメリットは?


経皮吸収型製剤のメリットをみてきましたが、逆にデメリットや気をつけるポイントなどはあるのでしょうか?

①かぶれることがある
②はがし忘れることがある
③全ての薬を経皮吸収型製剤にすることができない
④貼り方が悪いと効果を得られないことがある


①かぶれることがある

経皮吸収型製剤を皮膚にはることによって、かぶれを起こすことがあります。その原因は、皮膚刺激とアレルギーの2つ。アレルギーについては、含まれる添加剤や粘着剤によるものだと考えられます。


②はがし忘れることがある

経皮吸収型製剤は痛みを伴うなどの刺激がないため、うっかりはがし忘れることがあります。貼りっぱなしにしていると皮膚がかぶれてしまうことがあるので、注意しましょう。


③全ての薬を経皮吸収型製剤にすることができない

すべての医薬品を経皮吸収型製剤にすることができない理由は、皮膚を通過できない成分があるからです。また、投薬量が比較的少ないものに限られています。


④貼り方が悪いと効果を得られないことがある

薬剤は皮膚から吸収されるので、密着させて貼らないと充分浸透せずに、効果が薄れることがあります。



まとめ


  • 吸収型製剤とは?
    薬剤を含んだ貼り薬で、薬を皮膚から吸収させて体内に導くもの
  • 貼り薬との違いは?
    〇貼り薬 貼った部位にのみ薬効がある
    〇経皮吸収型製剤全身に薬効がある
  • 経皮吸収型製剤にはどんなものがあるの?
    ①ニコチンパッチ
    ②ホルモン製剤
    ③喘息パッチ
    ④狭心症治療薬
    ⑤麻薬鎮痛剤
  • 経皮吸収型製剤のメリットとは?
    ①扱いが簡単である
    ②経口摂取が困難な人にも投薬できる
    ③薬効を長時間一定に保つ
    ④はがすことで薬効を中断できる
    ⑤副作用が軽減される 
    ⑥初回通過効果を避けることができる
  • 経皮吸収型製剤のデメリットとは?
    ①かぶれることがある
    ②はがし忘れることがある
    ③全ての薬を経皮吸収型製剤にすることができない
    ④貼り方が悪いと効果を得られないことがある



おわりに


健康への関心が高まり、食に対する関心が高まっています。添加物や保存料を含む食品を避ける方も増えていますね。

実は様々な成分は、口からだけでなく皮膚からも取り込まれます。「経皮毒」という言葉を知っていますか?有害な合成化学物質を経皮吸収することが問題視され始めているんです。

以前に比べて、使用するスキンケア剤や家庭用洗剤の成分に意識を向ける人をみかけるようになりました。そんなマイナスイメージがある経皮吸収ですが、医学の分野でも利用されています。

今回は、経皮吸収型製剤についてまとめました。メリットとデメリットがあるので、ぜひ参考になさってくださいね。


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