レンネットを使わない『手作りチーズ』の賞味期限って?どのくらい日持ちするの?食べてはいけない状態とは?

『レンネットを使わないチーズ』の作り方をご存知ですか?チーズを自作する場合、レンネットを使って牛乳を固める方法が主流です。ところが身近なスーパーには売られていないため、ネット注文して入手する方がほとんど。

「もっと手軽に作りたい!」と試行錯誤した結果、乳酸菌で牛乳を凝固させる方法にたどり着きました。とてもおいしいうえに作る過程も楽しいので、今回の記事を参考にしてぜひ試してみてくださいね。

ところで、手作りの発酵食品には賞味期限がありません。「この状態は食べられるの?」と、疑問に思ったことはありませんか?私も最初は、腐っているかどうか迷うことがありました。

実は理論上、発酵食品は腐敗しないと言われています。それなのになぜ、市販の商品には賞味期限が表示されているのでしょうか?どのような状態だと食べるのを控えた方が良いのでしょうか?



『レンネットを使わない手作りチーズ』とは?


『レンネットを使わない手作りチーズ』ってなに?

それでは早速、『レンネットを使わないチーズ』の作り方をご紹介します。材料は牛乳と種になるチーズ、塩の3つだけ。作り方も次の3ステップ。とてもシンプルなんです。

〇牛乳と種チーズでヨーグルトを作り
〇水切りをして
〇熟成させるだけ!!

レシピについては「レンネットを使わない『手作りチーズ』の作り方!乳酸菌で発酵させるレシピをご紹介します!!」をご覧ください。


チーズを手作りすることのメリットとは?

①安心&安全である

チーズはナチュラルチーズとプロセスチーズに分けられることをご存知ですか?ナチュラルチーズは、乳をレンネットなどの酵素や菌などを使って、なんらかの方法で凝固させて熟成させたもの。プロセスチーズは、このナチュラルチーズを加工して作ったものです。

私たちがふだんスーパーなどで購入して食べているチーズは、主にプロセスチーズ。加工の過程で乳化剤や安定剤などの食品添加物が使われることがほとんどなんです。ナチュラルチーズのなかにも、安定剤などが含まれているものがあります。

手作りしたチーズは、材料や製造方法も目に見えるので流通品よりも安心していただくことができます。使う素材にこだわることが出来る点も大きなメリットです。

②得られる効果・効能が高まる

牛乳の栄養価にプラスして、発酵させることによって得られる効果・効能が高まります。発酵の過程で増える栄養素や酵素のチカラが加わるからなんです。

プロセスチーズに生きた乳酸菌は存在しない?

プロセスチーズは加工の際に加熱を行うため、乳酸菌は死滅してしまいます。

③保存性がよくなる

本物の発酵食品は、理論上では「腐らない」と言われています。なぜかというと、発酵菌と腐敗菌では発酵菌のほうが強く、発酵菌でいっぱいになっているところには腐敗菌が入るこむ余地がないからです。これを「菌の拮抗作用」と呼びます。

④おいしい!

そして、何よりもコクや旨味があって本当においしいんです!!発酵の過程でアミノ酸のひとつであるグルタミン酸が増し、うまみ成分が加わることがその理由です。

発酵とは?

微生物(酵母・カビ・細菌など)の働きによって、有機物(タンパク質・デンプン・糖など)が分解され、別の物質に変化すること。

発酵の過程で
①消化・吸収がよくなります。
②栄養価が加わります。
③うまみが加わります。
④保存性がよくなります。



発酵と腐敗のメカニズムは同じ?!


実は、発酵と腐敗は科学的なメカニズムが同じ!!発酵も腐敗も、物質が微生物のはたらきによって分解されたり変化したりして、「新しい物質」を生成します。

この「新しい物質」が、人間にとって有益なものの場合発酵と呼ばれ、人間にとって有害なものの場合腐敗と呼ばれているんです。

発酵 微生物が人間に有益な物質をつくりだすこと。
腐敗 微生物が人間に有害な物質をつくりだすこと。

つまり、私たち人間の捉え方によって、発酵なのか?腐敗なのか?を決めているということですね。いくつか具体的にみてみましょう。

〇蒸した大豆に、枯草菌を生やして納豆が作られる場合には発酵と呼ばれますが、煮豆を放っておいて枯草菌が生え、ネトやアンモニア臭がしたときは腐敗と呼ばれます。
〇牛乳に乳酸が蓄積して凝固したものは、ある時は発酵と呼ばれますが、ある時は腐敗と呼ばれます。
〇同じ乳酸菌でも、ヨーグルトや味噌が作られる場合は発酵ですが、これが清酒中で増殖する場合は火落ちといって、腐敗を意味します。



発酵食品は腐らない?


本物の発酵食品は理論上腐らないと言われています。なぜかというと、発酵菌と腐敗菌では発酵菌のほうが強く、発酵菌でいっぱいになっているところには腐敗菌が入るこむ余地がないからです。これを「菌の拮抗作用」と呼びます。つまり、保存状態さえよければ相当長い間、日持ちがするということ。

身近な食品で例を挙げると…

発酵食品の一種であるワインは、きちんと管理されていれば、何十年経っても腐りません。むしろ「ヴィンテージ(年代物)」と呼ばれて、非常に高値で取引されています。味噌も、「〇年熟成赤味噌」など、高級品として売られていたりしますね。

ところが作っているときや保存しているとき、使っている途中などで、雑菌が混入してしまうことがあります。この雑菌が人に対して有害な影響を与えた場合、腐敗になってしまうんです。




市販の発酵食品に賞味期限がある理由とは?



市販の発酵食品に賞味期限がある理由。それは「食品を流通させる時に衛生上の問題で殺菌されているから」。発酵食品が殺菌されると雑菌などが死んで食中毒から守られると同時に、発酵菌まで死んでしまうことになります(ちなみにプロセスチーズは先述のとおり、製造過程で乳酸菌が死滅しています)。

つまり「菌の拮抗作用」がなくなってしまい、腐敗をもたらす雑菌が侵入した場合、傷みやすい状態になるんです。保存期間や賞味期限を過ぎた場合、食品の見た目や風味に変化が生じます。

チーズの場合は、色が変わったり臭いが不快になったりします。その他、納豆だと糸の引きが悪くなったり黒っぽくなったりアンモニア臭が強烈になったりします。

賞味期限と消費期限の違いって?
農林水産省では次のような見解となっています。

「賞味期限」
袋や容器を未開封の状態で、容器に書かれた保存方法を守って保存しておけば、記入された年月日までは品質が変わらずにおいしく食べられる期限のこと。

「消費期限」
袋や容器を未開封の状態で、書かれている保存方法を守って保存しても、期限を過ぎたら食べない方が体に良い食品のこと。

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塩のチカラ


塩の役割とは?

チーズを熟成させるとき、塩を使います。実は、腐敗と密接な関係があるんです。塩は、発酵過程において「抑制」という役割で微生物を上手にコントロールしています。一言でいうと腐敗防止。 塩を入れることで、微生物の生育が抑えられます。

「促進」という役割も

塩や砂糖には、発酵を促進するという役割もあります。乳酸菌などの発酵に有用な微生物群が、塩を入れることで食品中で優先的に増殖します。また、砂糖は微生物のエサとなります。


なぜ塩や砂糖を入れると腐りにくくなるの?

食品に含まれる水には、「結合水」「自由水」とがあります。微生物が繁殖に利用できるのは自由水だけなので、これを減らせば抗菌力を高めることができます。具体的に、「乾燥させる、塩漬けにする、砂糖漬けにする」という3つの方法があります。

乾燥させるのは、単純に自由水を減らすため。また、食品に塩や砂糖を加えるのは、塩や砂糖を自由水と結びつけて結合水にし、自由水を減らすためです。

結合水と自由水って?

〇結合水
たんぱく質や糖質と強く結合して離れない水
〇自由水
自由に動くことができる水

また、塩あるいは砂糖を加えると、食材に含まれる水分や微生物の水分は、浸透作用によって塩や砂糖の方に流れ出ていきます。その結果、微生物にとって必要な食材の水分量が減り、増殖しずらくなるんです。



こんな場合は、食べるのを控えて!!


こんな場合は、食べるのをやめましょう!!

先ほど発酵食品は理論的には腐らないとお伝えしましたが、あくまでも正しい方法で保存ができている場合です。以下の状況が当てはまる場合は、残念ながら食べるのをやめて、新しく作り直しましょう。

①カビが生えてしまった場合
②明らかに見た目、臭い、味がおかしい場合


①カビが生えてしまった場合

カビってなに?

発酵食品を手作りしていると、一番悩まされるのがカビ。せっかく作ったのに、泣く泣く捨てることになってしまった…という話をよく聞きます。

カビ」とは、微生物群の一種で、菌類の姿を示す俗称。専門的には「真菌」や「菌類」と呼ばれており、数万種以上が生息しているといわれています。糸状の細胞を伸ばして広がり、胞子を飛ばして拡散します。

そして、カビには有益なものと有害なものとがあります。有害なものは、感染症やアレルギーを引き起こします。さらにカビが作り出す代謝産物であるカビ毒は、発がん性のものもあると言われているので、口にしないようにしましょう。

一方、有益なものもあります。「カビ」と聞くと、頭ごなしに毒だ!!と悪者扱いしてしまいがちですが、カンベールチーズやブルーチーズはカビのチカラを借りて作られます。また、米麹の麹菌もカビの一種。カラダに良いカビには、次の3つが挙げられます。

〇コウジカビ
味噌や醤油、甘酒などをつくる。
〇アオカビ
チーズなどをつくる。抗生物質である「ペニシリン」の材料になる。
〇酵母
パンやビール、ワインをつくる。

チーズのカビはなぜ無害なの?

カマンベールは白カビ、ブルーチーズは青カビですが、分類的にはどちらもアオカビ属(ペニシリウム属)。実は青カビには有毒成分が含まれています。それなのになぜ無害なのかというと、チーズがその成分を無毒化してくれているからなんです!!

青カビの有毒成分は、タンパク質がある環境では不安定になり、分解されます。さらに低温下の熟成環境やチーズに含まれているアンモニウムによっても、分解が促進されると言われています。これが人体に影響を与えない理由です。

チーズとカビの関係って?

青カビは酵素を分泌し、乳に含まれるタンパク質や脂肪を分解しながら繁殖を続けます。その際に、タンパク質を分解する酵素は旨み成分であるアミノ酸を作り出します。また、脂肪が脂肪酸に分解されることでも、チーズ独特の香りや味わいをもたらしています。

後で生えたカビには注意!!

青カビにはもともと有毒成分が含まれていると書きました。チーズが製造される過程で無毒化されているだけなので、後で生えたカビには注意が必要。特に黒色や赤色など、元々のカビとは明らかに違うものは有毒な可能性が高いです。

冷蔵庫で保存しましょう!!

カビの繁殖を防ぐため、冷蔵庫で保存しましょう。カビが生えやすい環境とは、温度が20℃~35℃くらい、湿度が80%と言われています。 ちなみに冷蔵庫は0℃~10℃、冷凍庫は-12℃以下に温度設定するよう、JIS規格で制定されています。


②明らかに見た目、臭い、味がおかしい場合

できあがった発酵食品はおいしいです。変な臭いもしません。基本的に発酵食品は腐らないとされていますが、保存状態はご家庭の環境によって様々。

これこそ自己判断になるのですが、保存している間に次のような状態になったら、雑菌が繁殖して腐敗している可能性が高いです。食べるのをやめておきましょう。

〇強い粘りが出ている。
〇糸を引いている。
〇異臭がする。
〇明らかに変な味がする。

できあがった発酵食品を長期保存していたら、すっぱくなったという経験はありませんか?まずは腐敗を疑うと思いますが、その答えは「発酵の過程で、乳酸菌や酢酸菌が優位に働いたから」。乳酸菌はヨーグルトを作る菌として、酢酸菌はお酢を作る菌として有名です。どちらも酸味が強い食品なので、分かりやすいですね。



まとめ


  • 『レンネットを使わないチーズ』の作り方って?
    〇材料は牛乳と種チーズと塩の3つ。
    〇手順は次の3ステップ。
    ①牛乳と種チーズと塩でヨーグルトを作り
    ②水切りをして
    ③熟成させるだけ!!
  • 発酵と腐敗の違いって?
    微生物の働きによる食材の変化の結果
    〇人間にとって有益な物質だと「発酵」
    〇人間にとって有害な物質だと「腐敗」
  • 発酵食品は腐らない?
    菌の拮抗作用により、本物の発酵食品は理論的に腐らないと言われる。
  • 市販品に賞味期限がある理由とは?
    流通上、衛生的に殺菌されているから。
  • こんな場合は、食べるのを控えましょう!!
    ①カビが生えてしまった場合。
    ②明らかに見た目、臭い、味がおかしい場合。



おわりに


健康への関心が高まり、発酵食品が注目されています。ところが、市販されている発酵食品は材料が遺伝子組み換えだったり、添加物や保存料が入っていたりしているものが多いんです。その点手作りだと、材料も製造過程も目に見えるので安心。

発酵させることで得られるメリットは大きいです!!もともとの食材の栄養価が高まり、効果・効能が増え、保存性が良くなり、そして何よりも旨みが増します。安価で手軽に手に入るというのも魅力的。 まさに良いことづくめですね。

「発酵生活はハードルが高いわ…」と思われがちですが、ポイントさえおさえれば作り方は至って簡単。ぜひ、今回の記事を参考にして、作ってみてくださいね!!

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