不妊①不妊治療とは?原因や検査、治療についてわかりやすくまとめました
カップルの約10組に1人が悩んでいるという不妊。その数は、妊娠を望むカップルの年齢が上がっていることともあり、増加していると言われています。
不妊と一口に言っても、その原因は様々。女性側、男性側、その両方になんらかの問題がある場合、加齢による影響、そしてまだまだ原因不明なことも多いんです。
妊活をし始めてから対策をとるのではなく、若いうちから情報を得て、心構えをしておくと慌てずに済みます。今回は、不妊についてわかりやすくまとめました。ぜひ参考にしてください。
不妊とは?
不妊とは?
不妊とは、妊娠を希望している健康な男女が避妊をせずに性交をしているにもかかわらず、一定期間妊娠しないこと。日本産科婦人科学会では、この「一定期間」について「1年というのが一般的である」と定義しています。
カップルの10%が不妊?
約10組に1組のカップルが不妊に悩んでいるというデータがあります。妊娠を希望するカップルの年齢が上がっていることにより、さらに増加しているという意見も。
妊娠しにくい方
女性に婦人科系の既往症があると、妊娠しずらくなると言われています。排卵に何らかの問題があって月経不順や無月経の状態が続いたり、子宮内膜症や子宮内膜炎、子宮筋腫などの疾患などです。
男性は精子をつくる機能が低下している方が当てはまります。原因としては、子どもの頃おたふく風邪などで高熱が続いたり、睾丸炎などの病歴があったりする場合です。
不妊の原因とは?
不妊の原因は様々ですが、女性側にある場合、男性側にある場合、両方にある場合が考えられます。その割合は、およそ半々だと言われています。また、男女共通している原因として加齢による影響があります。
排卵因子、卵管因子に男性不因子を加えた3つは頻度が高く、不妊症の3大原因と言われています。
女性側の原因
女性側の原因としては、次のようになります。
①排卵因子(排卵障害)
②卵管因子(閉塞、狭窄、癒着)
③頸管因子 (子宮頸管炎、子宮頸管からの粘液分泌異常など)
④免疫因子 (抗精子抗体など)
⑤子宮因子(子宮筋腫や子宮内膜ポリープなど)
①排卵因子
通常の月経周期は25日~38日 。これに当てはまらない月経不順の方は、排卵障害の可能性があります。排卵がなければ妊娠することはありません。
排卵しているかどうかは基礎体温を記録すると分かります。月経不順の場合は基礎体温をつけ、異常がある場合は産婦人科を受診しましょう。排卵が起こらない原因としては
〇ホルモンバランスが正常に働いていない
〇大幅な体重減少
〇極度の肥満
〇大きな精神的ストレス
などが挙げられます。
②卵管因子
卵管は子宮と卵巣をつなげている管で、精子と卵子の通り道であり、受精する場です。閉塞(卵管がつまる)、狭窄(卵管内の幅が狭くなる)、癒着などの状態だと妊娠することができません。
原因としては
〇卵管炎
〇クラミジア感染症
〇子宮内膜症
〇虫垂炎など骨盤内の手術歴
などが挙げられます。
③頸管因子
子宮頸管は、膣と子宮をつなぐ筒状の管。ふだんは雑菌の侵入を防いだり胎児が外に出ないようにしたりするために、しっかりと閉じられています。排卵が近づくと、精子を招き入れやすくするために酸性からアルカリ性に変化したり、おりものを増やしたりします。
子宮頸管炎や子宮頸管からの粘液分泌異常などがあると精子は子宮内に侵入しにくくなり、妊娠が起きにくくなるんです。
④免疫因子
女性側に、 抗精子抗体や精子不動化抗という精子を攻撃する抗体がみつかることがあります。これらの抗体が子宮頸管や卵管の中で分泌されると、精子の運動性が失われて卵子に到達できなくなってしまいます。 受精の場面でも、卵子と精子の結合を妨げます。
〇抗精子抗体
精子を障害する抗体
〇精子不動化抗体
精子の運動を止めてしまう抗体
抗体とは?
外部から細菌やウイルスなど免疫反応を引き起こす異物が入ってきたときに、排除しようとするタンパク質のこと。
⑤子宮因子
子宮粘膜下筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮腔内癒着症、中隔子宮などにより、受精卵の着床に障害が起きることがあります。子宮筋腫は着床を妨げるだけでなく、精子が卵子へ到達するのを妨げるとも言われています。
子宮筋腫についての詳しい記事はこちらから↓↓
子宮筋腫とは?原因や症状って?悪性に変化するの?手術は必要?
男性側の原因
男性側の原因としては、次のようになります。
①造精機能障害
②精路通過障害
③性機能障害
①造精機能障害
次のような状態を造精機能障害と呼んでいます。
〇 精液の中の精子の数が少ない状態
〇 精液の中の精子がみられない状態
〇精子の運動性が悪い状態
〇両方の場合
精子は精巣(睾丸)の中で作られ、精巣上体を通過しながら運動性を獲得します。精巣での精子形成や、精巣上体での成熟過程に異常があると造精機能障害を起こすのではないかと考えられていますが、原因不明なことが多いです。
②精路通過障害
精子は精巣で造られ、 精路(精巣上体、精管、射精管)を通り、射精により精液として尿道から排出されます。精路通過障害とは、精巣で精子が作られていても、通り道である精路が詰まっていて精液の中に精子がいないという状態。
無精子症の原因の15~20%を占めています。原因としては、精巣上体炎による閉塞、鼠径ヘルニア手術、先天性の両側精管欠損などが挙げられます。
③性機能障害
性機能障害には、次の3つがあります。
〇勃起障害 (ED)
〇射精障害
〇勃起障害と射精障害の両方
〇勃起障害(ED)
勃起ができないため挿入することができず、性行為がうまくいきません。
〇射精障害
勃起はするのですが、射精がうまくいかない状態。
原因としては、心的要因が最も大きいと言われています。その他、動脈硬化や糖尿病などの病気が原因のこともあります。
加齢による不妊と原因不明の不妊
加齢による影響
男女ともに、加齢は妊娠や出産に影響を与えます。男性は、35歳頃から少しずつ精子の質の低下が起こります。
女性が最も妊娠しやすいのは20歳前後。30歳を過ぎると妊娠する確率が低くなっていき、30歳半ば頃から、妊娠・出産時のリスクも高くなります。45歳を過ぎると質の良い卵子をつくることができなくなり、排卵や生理がある方でも妊娠の可能性が著しく低下してしまうんです。
原因不明不妊
不妊症の検査をしても明らかな不妊の原因が見つからない場合があります。これを原因不明不妊といいます。原因不明とはいえ、明確にされていない問題があると考えられており、次の2点が指摘されています。
① 精子と卵子が体内で受精していない場合
② 精子または卵子の質が低下、あるいはその機能がなくなっている場合
①精子と卵子が体内で受精しない場合
特定はできないのですが、何らかの原因によって 卵管内で精子と卵子が受精できないケース。人工授精や体外受精治療などの生殖補助技術が適応となります。
②精子または卵子の質が低下、あるいはその機能が消失している場合
精子や卵子は加齢とともにその質を失っていきます。一般的に30歳を過ぎたころから下降し始め、35歳くらいで急降下するんです。
女性の場合、37~44歳の間でその機能がなくなります。精子や卵子はその機能がなくなると、再び戻ることはありません。不妊治療を早めに始めた方がいいと言われているのはこのためです。
原因不明不妊の割合
不妊症の10~15% 、つまり1/3に当てはまるという調査結果があります。ますます増加していると言われています。
不妊の検査とは?
不妊の検査はどのように行われるのでしょうか?こちらも、男性、女性に分けてみていきます。
女性側の検査
女性側の検査には、次のようなものがあります。
①内診・経膣超音波検査
②子宮卵管造影検査
③ホルモンの検査
④性交後試験(Huhnerテスト、またはPCT)
⑤その他
①内診・経膣超音波検査
診察台の上で行います。内診や膣内に超音波を発生させるプロープを入れて、子宮に異常がないかどうかを調べる検査です。
子宮内膜症や子宮筋腫、 卵巣のう腫 、クラミジア感染症などの病気があるかどうかなどが分かります。また、卵胞の大きさをみることで正確な排卵日を予想することも可能です。
②子宮卵管造影検査
X線造影室で行います。子宮に造影剤を注入し、X線で撮影して、卵管が詰まっていないかどうか、子宮の中の形に異常がないかどうかを調べる検査です。
③ホルモンの検査
採血室で行います。血液を採取してホルモン検査を行い、子宮・卵巣の機能不全や排卵障害などを調べます。月経周期によって分泌されるホルモンが違うため、一般的には2回、 月経期・黄体期などに分けて検査します。
④性交後試験(Huhnerテスト、またはPCT)
排卵期に性交を行い、その翌日に子宮頸管粘液を採取して、その中に泳いでいる精子がどれぐらい存在し、前進する力があるのかを調べます。女性の頚管粘液と男性の精子の適合性を見る検査です。 陰性の場合や明らかな原因が見当たらない場合は採血を行い、免疫因子(抗精子抗体)の有無などを調べます。
⑤その他
その他、全身麻酔をかけ手術室で行う腹腔鏡検査、⼦宮の中に細いカメラを入れて⼦宮の内部を直接観察する子宮鏡検査、MRI検査などがあります。
男性側の検査
男性側の検査には、次のようなものがあります。
①精液検査
②泌尿器科的な検査
①精液検査
精液検査は、不妊治療を目的として受診した男性が受ける、一般的な検査です。2~7日の禁欲期間(射精しない期間)後の、マスターベーションで採取した精液を検査。精液量、精子濃度、運動率、運動の質、精子の形態、感染の有無などを調べます。
②泌尿器科的な検査
診察、エコー検査、採血などを行います。
産婦人科で精液検査を受け、異常が認められた場合は泌尿器科で詳しい検査を行うことが推奨されています。不妊治療の方針を決めるうえで、両科の連携が大切だと言われています。
不妊の治療とは?
原因が分かっている場合の治療と、原因が特定できない場合の治療とがあります。順番にみていきましょう。
①原因が分かっている場合の治療
〇女性側に原因がある場合の治療
〇男性側に原因がある場合の治療
があります。検査によって判明した原因に対して、アプローチを行います。
〇女性側に原因がある場合の治療
女性に原因がある場合の治療は、次の通りです。
〇排卵障害に対する治療
〇卵管狭窄・閉塞
〇子宮内膜症に対する治療
〇慢性子宮内膜炎に対する治療
〇男性に原因がある場合の治療
男性に原因がある場合の治療は、次の通りです。
〇乏精子症に対する治療
〇無精子症に対する治療
〇勃起障害・射精障害に対する治療
②原因が特定できない場合の治療
排卵と受精を補助する治療を行います。次の方法があります。
〇 タイミング法
〇排卵誘発法
〇人工授精
〇生殖補助医療(体外受精・顕微授精)
一般的には、タイミング法→排卵誘発法→人工授精→ 生殖補助医療(体外受精・顕微授精) の順番で進めます。 人工授精と 生殖補助医療(体外受精・顕微授精) は自費です。
不妊の治療について、詳しくはこちらの記事に詳しくまとめましたので、参考にしてください↓↓
まとめ
- 不妊とは?
妊娠を希望している健康な男女が避妊をせずに性交をしているにもかかわらず、一定期間妊娠しないこと。日本産科婦人科学会では、この「一定期間」について「1年というのが一般的である」と定義している。 - 女性側の原因
①排卵因子(排卵障害)
②卵管因子(閉塞、狭窄、癒着)
③頸管因子 (子宮頸管炎、子宮頸管からの粘液分泌異常など)
④免疫因子 (抗精子抗体など)
⑤子宮因子(子宮筋腫や子宮内膜ポリープなど) - 男性側の原因
①造精機能障害
②精路通過障害
③性機能障害 - 加齢による原因
- 原因不明
① 精子と卵子が体内で受精していない場合
② 精子または卵子の質が低下、あるいはその機能がなくなっている場合 - 女性側の検査
①内診・経膣超音波検査
②子宮卵管造影検査
③ホルモンの検査
④性交後試験(Huhnerテスト、またはPCT)
⑤腹腔鏡検査、子宮鏡検査、MRI検査 - 男性側の検査
①精液検査
②泌尿器科的な検査 - 女性側に原因がある場合の治療
〇排卵障害に対する治療
〇卵管狭窄・閉塞
〇子宮内膜症に対する治療
〇慢性子宮内膜炎に対する治療 - 男性側に原因がある場合の治療
〇乏精子症に対する治療
〇無精子症に対する治療
〇勃起障害・射精障害に対する治療 - 原因が特定できない場合の治療
〇 タイミング法
〇排卵誘発法
〇人工授精
〇生殖補助医療(体外受精・顕微授精)
おわりに
一昔前に比べると、子どもを望む時期が高齢化してきており、不妊治療を始めるタイミングが遅くなっています。そのため、不妊に悩むカップルの数も増えていると言われています。
精子や卵子は加齢に伴ってその力を失っていくので、若いうちから将来に対して備える必要がありますが、実際は関心が向かない方が多いというのが現状です。
いざというときに後悔しないように、知識をもっておくことは無駄ではありません。今回の記事が参考になれば幸いです。
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