子宮内フローラとは?善玉菌ラクトバチルスの割合が90%を超えると妊娠率が上がる?!検査方法などを紹介します!
「子宮内フローラ」という言葉をご存知ですか?もしかすると「腸内フローラ」という名前は聞いたことがあるかもしれません。
腸内にすむ菌は集まって叢をなしていて、お花にみえることからこの名前がつけられているんです。少し前まで子宮は無菌だと言われていました。しかし近年、腸と同じように細菌が集まっていることが分かってきて、子宮内フローラと呼ばれています。
研究が進むにつれ、妊娠・出産率と大きな関わりがあることが分かってきました。子宮内フローラはいったいどういうもの?その働きとは?今回は、子宮内フローラについて書きたいと思います。
この記事の目次
- 1.子宮内フローラとは?
- 2.常在菌ラクトバチルス
- 3.子宮内フローラを調べるには?
- 4.子宮内フローラが乱れる原因は?
- 5.子宮内フローラを整えるには?
- 6.まとめ
- 7.おわりに
子宮内フローラとは?
微生物叢=マイクロバイオーム=フローラ
私たちの体重の約3%は微生物で、これらの微生物は体内に侵入してくる病原菌と区別して常在菌と呼ばれており、 およそ1000種・数十兆個が生息していると言われています。
常在菌は、消化器・皮膚・口腔・鼻腔・呼吸器・生殖器など人体の内部や外部のあらゆる場所に、 それぞれ特有の微生物叢を形成しています。これら微生物の集団を、 微生物叢 (微生物の草むら)と呼んでいます。
微生物(マイクローブ)の集合体(オーム)という意味でマイクロバイオーム、顕微鏡で観察したときに色鮮やかなお花畑に見えたことからフローラとも呼ばれます。
微生物とは?
細菌・真菌(カビの仲間)・古細菌・ウイルスなど
子宮内フローラって?
子宮内フローラとは、子宮内に存在する細菌の集まりのこと。実はつい最近まで、子宮は無菌だと考えられていました。 2015年のNGS(次世代シーケンサー)を用いた研究によって、子宮内細菌の存在があきらかになったのです。
腸内フローラと同じように、善玉菌と悪玉菌が存在します。そして、善玉乳酸菌であるラクトバチルスが妊娠・出産率に大きく関係していることも判明しました。
腸内フローラとは?
腸内細菌の菌種は約1,000種類と、多種多様。 同じ種類の菌たちが塊となり、腸壁にびっしり張り付いています。その様子がお花畑 (flora)にみえることから腸内フローラと呼ばれるようになりました。
常在菌ラクトバチルス
ラクトバチルスって?
ラクトバチルスは子宮内や腟内の常在菌で、子宮内フローラを構成する善玉乳酸菌のひとつです。ラクトバチルスの数によって、子宮内フローラが整っているかどうかが決まります。
ラクトバチルスの働きとは?
ラクトバチルスは、感染症を予防する働きがあります。子宮内フローラが乱れてラクトバチルスの数が減ると病原性微生物が侵入しやすくなり、細菌性腟感染症や真菌感染症、性感染症などにかかりやすくなります。また、妊娠・出産率とも深い関係が。
ラクトバチルスが90%以上の割合を占めていると、着床率・妊娠率・妊娠継続率・出産率が高くなるということが、カルロス・シモン教授らによる臨床研究によって確認されています。
ラクトバチルスが90%未満から90%以上になると…
〇着床率 23.1%→60.1%
〇妊娠率 33.3%→70.6%
〇妊娠継続率 13.3%→ 58.8%
〇出産率 6.7%→58.8%
なぜ妊娠・出産率が低下するの?
子宮内フローラが乱れてラクトバチルスが減少すると、外部から病原性微生物が侵入。すると、子宮内に入った悪者を排除するために免疫システムが作動します。免疫システムが過剰に反応すると受精卵まで排除してしまうため、妊娠・出産率が低下すると言われています。
悪玉常在菌は、子宮内で受精卵の着床を妨げることが分かっています。また、子宮内の乳酸菌が減った状態では流産率が上昇するという研究結果も出ています。
子宮内フローラを調べるには?
子宮内フローラを調べるには?
なかなか着床しなかったり、妊娠が分かっても育ちにくいなど、妊活で悩まれている方が受けることが多いです。子宮内や膣の細菌の種類と菌量を測定し、ラクトバチルスの割合をみます。
検査方法って?
子宮内に検査用の細い器具を挿入し、子宮内膜の細胞や子宮内腔の液体を採取。次世代シーケンサーと呼ばれる装置によって、検体に含まれる全ての細菌のDNA配列が解読されます。
検査は短時間で終了します。一般的に検査結果が分かるまでの期間は、3〜4週間程度。費用は医療機関によって異なりますが、概ね5~7万円くらいのようです。
検査キットを取り寄せ、自宅で検体を採取して検査機関に送付するいう方法もあります。医療機関よりも費用的にお安く受けることができます。
検査を受けるメリットとは?
①不妊症の原因が解明される
②胚移植の判断基準になる
③流産を防ぐ確率が上がる
④感染症を確認することができる
⑤早産の可能性を確認することができる
不妊で悩んでいる方が検査を受けることで、原因について手がかりを得ることができる可能性があります。妊娠しずらい理由が子宮内フローラと関係しているかどうか、不妊の原因の20%を占めると言われている慢性子宮内膜炎に感染しているかどうか、などを知ることができるからです。
受精卵を子宮に戻すことを胚移植といいます。子宮内フローラを整えることで 胚移植後の着床率が上がったり、流産の防止につながったりという臨床結果が出ています。
異常が認められたら…
子宮内フローラを調べる検査で異常が認められた場合、次のような治療をします。約1か月後に子宮内フローラの再検査を行い、正常になったら通常の不妊治療が開始されることが多いです。
①ラクトバチルスの割合を増やしていく治療
② 慢性子宮内膜炎の治療
「①ラクトバチルスの割合を増やしていく治療」としては、次に挙げる方法があります。
〇抗生剤を使用する
〇サプリメントを摂取する
〇生活改善など
子宮内に悪玉菌がいると、善玉菌であるラクトバチルスを増やすことができません。悪玉菌がいると認められた場合はまず抗生剤で治療を行い、サプリメントを摂取してラクトバチルスを補っていきます。
② 慢性子宮内膜炎の治療
菌性腟症に関連する細菌が検出された場合は、抗菌薬を使用して治療します。
子宮内フローラが乱れる原因は?
子宮内フローラが乱れる原因として、次のようなことが挙げられます。
①生活習慣の乱れやストレス
②女性ホルモンの分泌の低下
③免疫力の低下
④もともとの体質の影響
食生活や睡眠、運動習慣が子宮内フローラの乱れと大きく関わっているそう。ストレスも大敵です。影響が大きいと言われているのが喫煙。これらをふまえて、子宮内フローラを整えるためにできることをみていきましょう。
子宮内フローラを整えるには?
子宮内フローラを整えるために
子宮内フローラを整えることで、妊娠しやすいカラダをつくることができます。ふだんから以下のことを意識するといいです。
〇生活習慣を改善する
〇ストレスをためない
〇食生活に留意する
生活習慣を整えるには、食事、睡眠、運動の3つに気をつける必要があります。睡眠不足や運動不足になると、免疫力が低下したり、女性ホルモンの分泌が低下したりします。これらは、子宮内フローラの乱れにつながってしまうんです。
質の高い睡眠、睡眠時間の確保に努めましょう。適度な運動も大切です。また、ストレス過多も同様です。ストレスをためこまないよう、上手に発散できるといいですね。
食事に関しては、外食やファーストフードに頼っていると、悪玉菌が増える原因となってしまいます。できるだけ添加物を避け、まんべんなく栄養を摂ることが大切です。
子宮内フローラは腸内フローラと関係があると言われています。腸内環境を整える食材である食物繊維や発酵食品、オリゴ糖を含む食品を積極的に取り入れましょう。水溶性の食物繊維やオリゴ糖は、ラクトバチルス属の細菌のエサとなります。
食物繊維を多く含む食品
根菜類・キノコ類・海藻類・豆類など
発酵食品
納豆・チーズ・味噌・ヨーグルト・ぬか漬け・醤油・酢など
オリゴ糖を多く含む食品
はちみつ・牛乳・きなこ・玉ねぎ・にんにく・バナナなど
ラクトフェリンのサプリメント
ラクトフェリンは、チーズやヨーグルトなどの乳製品に含まれている成分。ラクトバチルスを増やすという働きがあります。加熱されると含有量が減ってしまうため、食品からはほとんど摂取できません。サプリメントから摂取します。
やってはいけないこと
膣内は外から悪い菌が侵入しないように、弱酸性に保たれています。これを乳酸桿菌による膣の自浄作用と言います。洗いすぎると善玉菌が流れてしまうので気をつけましょう。 長時間のタンポン使用、喫煙、抗生剤の長期使用も腟内フローラのダメージになります。
子宮内フローラと腸内フローラ
子宮内フローラと密接な関係があるという腸内フローラ。健康に対する関心の高まりとともに、腸活という言葉がよく聞かれるようになりました。腸を整えることについては、次の記事に詳しくまとめてありますので、ぜひ参考にしてくださいね↓↓
腸を整えるには?腸内環境の状態はどう判断するの?『腸活』の2つの方法って?
まとめ
- 子宮内フローラとは?
子宮内に存在する細菌の集まりのこと - 善玉乳酸菌であるラクトバチルスが妊娠・出産率に大きく関係している
- ラクトバチルスとは?
〇子宮内や腟内の常在菌で、子宮内フローラを構成する善玉乳酸菌のひとつ
〇ラクトバチルスの数によって、子宮内フローラが整っているかどうかが決まる
〇感染症を予防する働きがある
〇ラクトバチルスが90%以上の割合を占めていると、着床率・妊娠率・妊娠継続率・出産率が高くなる - 子宮内フローラを調べるには?
子宮内や膣の細菌の種類と菌量を測定し、ラクトバチルスの割合をみる - 検査方法は?
〇子宮内に検査用の細い器具を挿入し、子宮内膜の細胞や子宮内腔の液体を採取
〇次世代シーケンサーと呼ばれる装置によって、検体に含まれる全ての細菌のDNA配列が解読される - 検査を受けるメリット
①不妊症の原因が解明される
②胚移植の判断基準になる
③流産を防ぐ確率が上がる
④感染症を確認することができる
⑤早産の可能性を確認することができる - 治療について
①ラクトバチルスの割合を増やしていく治療
〇抗生剤を使用する
〇サプリメントを摂取する
〇生活改善など
② 慢性子宮内膜炎の治療 - 子宮内フローラが乱れる原因とは?
①生活習慣の乱れやストレス
②女性ホルモンの分泌の低下
③免疫力の低下
④もともとの体質の影響 - 子宮内フローラを整えるために
〇生活習慣を改善する
〇ストレスをためない
〇食生活に留意する
おわりに
子宮内フローラは、子宮内に存在する細菌の集まりのこと。 少し前まで無菌だと思われていた子宮には細菌が叢をなしており、善玉乳酸菌であるラクトバチルスが妊娠・出産率に大きく関係していることが分かりました。不妊治療の前に子宮内フローラを調べて整えることで、効果が高まると注目されています。
子宮内フローラを整えるには、治療に加えて生活習慣を見直すことも効果的。子宮内フローラは腸内フローラと関係があると言われ、腸内環境を整えることも大切です。今回の記事を参考にして、できることから取り組んでみてくださいね。
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