発酵ってなに?シリーズ⑬「温度」との関係とは?発酵しない理由って?加熱しても大丈夫?「手作り発酵食19レシピ」もご紹介します!!
発酵と温度は、切っても切れない関係。発酵食品を手作りするようになると、必ずと言っていいほど温度についての疑問が浮かんできます。
〇発酵しない理由は温度管理にあり?
〇カビと温度との関係って?
〇発酵食品は加熱してもいいの?
今回は、「温度」というキーワードに焦点を当てていきますね。発酵食品を食べたり作ったりする際の参考にしてください!!
この記事の目次
- 1.発酵とは?
- 2.発酵しないのはなぜ?
- 3.カビと温度との関係
- 4.発酵食品は加熱してもいいの?
- 5.麹菌、酵素、乳酸菌、酵母、納豆菌と温度との関係
- 6.手作り発酵レシピ19選
- 7.まとめ
- 8.おわりに
発酵とは?
発酵とは?
まずは『発酵』について簡単に説明しましょう。発酵とは、微生物(酵母・カビ・細菌など)の働きによって、有機物(タンパク質・デンプン・糖など)が分解され、別の物質に変化すること。発酵の過程で得られるメリットは次の通りです。
①消化・吸収がよくなる
②栄養価が加わる
③うまみが加わる
④保存性がよくなる
①消化・吸収がよくなる
微生物が生成した酵素は、栄養素を分解します。ある程度分解された状態で摂取されるため、体内での消化・吸収がしやすくなります。
②うまみが加わる
酵素で分解生成されたさまざまな成分は、香りや味を出し、もともとの食材を変身させます。
③栄養価が加わる
食品は発酵させることで栄養価がアップします。 微生物によって食材のデンプンやたんぱく質等の栄養素が分解されることもメリットのひとつ。栄養をスムーズに取り込むことができます。
④保存性がよくなる
本物の発酵食品は、理論上では「腐らない」と言われています。なぜかというと、発酵菌と腐敗菌では発酵菌のほうが強く、発酵菌でいっぱいになっているところには腐敗菌が入るこむ余地がないからです。これを「菌の拮抗作用」と呼びます。
発酵と腐敗のメカニズムは同じ?!
発酵も腐敗もその仕組みは同じ。与える影響によって呼び方が異なるだけなんです。
〇発酵 微生物が人間に有益な物質をつくりだすこと。
〇腐敗 微生物が人間に有害な物質をつくりだすこと。
発酵しないのはなぜ?
「レシピ通りに作ったのに、発酵しないんだけど…」という悩みをよく聞きます。乳酸発酵時に保存容器のふたを開けたとき、まったくガスが発生していない場合は、発酵が上手に進んでいない可能性があります。
麹菌の発酵の場合は、甘みや旨味が感じられない状態ですと、発酵不足だと考えられます。なぜ上手に発酵が進まなかったのでしょうか?これにはちゃんと理由があるんです。
発酵のメカニズム
乳酸発酵の場合をみてみましょう。野菜には、もともと乳酸菌が付着しています。塩を加えると、浸透圧によって野菜に含まれる有機物が浸出します。浸み出した有機物を栄養分にして乳酸菌が増え、発酵が進むというメカニズムなんです。
発酵しない理由って?
発酵発酵の場合、「乳酸菌が有機物を栄養分にして増えることで発酵が進む」ということが分かりました。発酵しないということは、乳酸菌が活発に働いていないから。たいていは、温度管理に原因があることが多いです。
乳酸菌には、活性化する温度、働きが鈍くなる温度、死滅する温度があります。環境によって、増え方が違ってくるんです。これは、麹菌や酢酸菌、酵母などについても同様のことが言えます。
じょうずに発酵させるためのポイントとは?
以上のことから、じょうずに発酵させるためには温度管理が大切だということが分かりました。乳酸菌、麹菌を例にとってみていきます。
乳酸菌と温度
一般的に乳酸菌が最も活発に働く温度は、20~45度。つまり、冬場で気温が低いときには発酵が進みづらくなり、夏場で気温が高いときには過発酵になる可能性が高いということです。
気温が低くて発酵が進まないときには、20~45度を保たなければなりません。ご家庭によって室温は様々。季節による寒暖差も大きいです。じょうずに発酵させるには、一定の温度を保つ工夫をしましょう。
麹菌と温度
麹菌を使って発酵食品を作る場合、50~60度を保って発酵させます。これは糖化させるために最適な温度が60度前後だからです。一方、麹菌の増殖に適した温度は25~30度。繁殖が止まるのは45度、そして50度前後で死滅します。なんだか矛盾を感じませんか?
50~60度では麹菌そのものは生きていくことができません。『糖化』は、麹菌が発酵の過程で作り出す酵素の働きを利用したものなんです。
酵素の適温は?
麹菌が作り出す酵素。多くの酵素は60~70度で失活します。活動が止まるとデンプンを分解してくれなくなるので糖ができず、甘くなりません。逆に50度以下でも、酵素の働きは鈍くなってしまいます。
酵素が活発に活動する温度は50~60度。つまり温度が高すぎても低すぎても、NGだということ。「じょうずに発酵してくれなかった…」という方は、この温度調整に失敗したからなんです。
カビと温度との関係
発酵食品を作っていて悩まされるのがカビ。せっかく作ったのに泣く泣く捨てることになった…という話をよく聞きます。
カビは、5~45℃で発育します。冷蔵庫でも少しずつ増殖するのですが、最も育つのは15~30℃。繁殖を抑えるには、この温度を避ければいいということですね。
カビと言っても、カラダに有害なものと無害のものがあります。詳しくは、こちらの記事を参考にしてください。
発酵ってなに?シリーズ⑧手作りの発酵食品に「カビ」が生えてしまった!!カビって何?対策は?「手作り発酵食9レシピ」もご紹介します!!
発酵食品は加熱してもいいの?
生菌と死菌って?
発酵食品を食べるときに浮かぶのが、「加熱しても大丈夫なの?」という疑問。一般的に乳酸菌や麹菌は、一定の温度以上で死滅すると言われているからです。
例えば乳酸菌。CMなどで「生きたまま腸まで届く」というキャッチフレーズを聞いて、死滅して腸まで届かないのでは、意味がないんじゃないか?と思われる方もいらっしゃるでしょう。実は乳酸菌のほとんどは消化器官を通る際、胃液で溶かされてしまうものがほとんど。
また、乳酸菌といってもその種類はたくさんあって、性質も多種多様。生きて腸まで届くものもいれば、死滅してしまうものもいます。
「死菌」にも役割があるんです!!
そもそも発酵食品が体に良いのは「発酵の過程で有益な成分が生成されていたり、消化しにくい物質が消化されやすくなるから」。生きた菌が腸に届かなくても、ちゃんと効果・効能を得ています。
また、死菌でも生菌の半分くらいの菌数の効果は期待できます。しかもいわゆる「死菌」にも次のような役割があるので、さほど気にする必要はありません。その役割については次の通りです。
〇腸に棲みついている乳酸菌のエサになり、腸内環境のバランスを善玉菌優位にする。
〇血中コレステロール値を下げるはたらは生菌と同じ。
〇免疫を高める効果がある。
麹菌、酵素、乳酸菌、酵母、納豆菌と温度との関係
麹菌、酵素、乳酸菌、酵母。一般的に言われている温度との関係は、次の通りなので、参考にしてくださいね。
①麹菌
〇増殖に適した温度 25~30度
〇繁殖が止まる温度 45度
〇死滅する温度 50度前後
②酵素
〇失活する温度 60~70度、50度以下
③乳酸菌
〇最も活発に働く温度 20~45度
〇徐々に死滅する温度 50℃以上
〇死滅する温度 70℃
乳酸菌とひと口に言っても、実はたくさんの種類があります。その性質や形はさまざま。種類によって活性化する温度にも差があるんです。
〇高温性 40~45度
〇中温性 30~35度
〇低温性 10度
④酵母菌
〇最も活発に働く温度 35~38度
〇活動が低下する温度 10度以下
〇死滅する温度 55度以上
⑤納豆菌
たいていの菌は、高温だと死滅してしまいます。それに比べて納豆菌は、高温に強く100℃でも死滅しません。納豆菌を死滅させるためには、120℃の温度が必要です。低温にも強くマイナス100℃でも死滅しないんです。
熱に弱いナットウキナーゼ
納豆菌は熱に強いのですが、発酵過程で生成されるナットウキナーゼなどの活性酵素は熱に弱いんです。酵素以外の栄養素は加熱してもこわれないので、参考にしてくださいね。
手作り発酵レシピ19選
最後に、私がふだん作っている発酵食品「19 レシピ」を以下に貼っておきます。日々の食卓にとり入れることができるよう、できるだけ簡単に&シンプルに作る工夫をしていますので、ぜひトライしてみてくださいね。
麹を使った9レシピ
お砂糖不使用!!あずきを使った『発酵あんこ』の作り方~3つの材料&2ステップでできちゃいます
砂糖不使用!!栗を使った『発酵あんこ』。材料は栗と米麹だけ!!作り方をご紹介します
砂糖不使用!!サツマイモを使った『発酵あんこ』の作り方。早い&簡単&らくちん♪洗いものは必要最低限!!炊飯器だけでできるんです
『発酵トマトケチャップ』の作り方。意外と簡単!3ステップでできちゃいます!!
『発酵マヨネーズ』の作り方。甘酒バージョン&塩麹バージョン。2種類の味をご紹介します!!
発酵食品を手作り!!3ステップでできちゃう『自家製豆板醤』の作り方
炊飯器を使って!一日でできる『おからで作る味噌』の作り方。簡単!早い!3ステップでできちゃいます!!
まとめ
- 発酵とは?
微生物(酵母・カビ・細菌など)の働きによって、有機物(タンパク質・デンプン・糖など)が分解され、別の物質に変化すること。 発酵の過程で
①消化・吸収がよくなる
②栄養価が加わる
③うまみが加わる
④保存性がよくなる - 発酵しないのはなぜ?
発酵しないということは、発酵菌が活発に働いていないから。
たいていは、温度管理に原因があることが多い。 - じょうずに発酵させるためのポイントとは?
温度管理に気をつける
→それぞれの発酵菌が活発に働く温度を保つこと。 - カビと温度との関係
5~45℃で発育。最も発生しやすいのは15~30℃。 - 発酵食品は加熱してもいいの?
死菌にも役割がある。
おわりに
今回は、「温度」がキーワードでしたが、いかがでしたか?発酵食品を食べたり作ったりするときの参考になれば嬉しいです!!
健康への関心が高まり、発酵食品が注目されています。ところが、市販されている発酵食品は材料が遺伝子組み換えだったり、添加物や保存料が入っていたりしているものが多いんです。その点手作りだと、材料も製造過程も目に見えるので安心。
元々、カラダに良い食材たち。それを発酵させることで得られるメリットは大きいです!!栄養価が高まり、効果・効能が増え、保存性が良くなり、そして何よりも旨みが増します。まさに良いことづくめですね。
「発酵生活はハードルが高いわ…」と思われがちですが、ポイントさえおさえれば作り方は至って簡単。ぜひ、今回の記事を参考にして、作ってみてください!!
この記事へのコメントはありません。