子宮内膜炎とは?症状や検査、治療について分かりやすく説明します!!
子宮内膜炎という病気をご存知ですか?子宮内膜症はよく耳にしますが、子宮内膜炎は聞きなじみのない病名ではないでしょうか?
子宮内膜炎は、細菌感染が原因です。急性と慢性とがあり、慢性子宮内膜炎を患うと妊娠率に影響を及ぼすため治療が必要。不妊治療と大きく関係しています。
今回の記事では、子宮内膜炎について書きました。日頃から気を付けることもありますので、ぜひ参考にしてくださいね。
子宮内膜炎とは?
子宮内膜炎とは?
子宮内膜炎は、子宮の内側を覆っている内膜に炎症が起こる病気。 細菌感染が主な原因です。 細菌が子宮の入り口から入って上部に感染が拡大し、子宮に達すると子宮内膜炎になります。
炎症をひき起こす原因菌って?
大腸菌、連鎖球菌、腸球菌、ブドウ球菌、クラミジア、淋菌、結核菌、マイコプラズマなど。複数菌感染が多い。
通常ですと、子宮内膜は月経のたびにはがれて体外に排出されるので炎症が起きることはありません。 しかし、細菌に感染すると炎症が起きてしまうんです。
出産、流産の後、人工妊娠中絶の後 、IUDの挿入後や子宮の手術後等は子宮頸管が開いているため、感染しやすくなっています。
産褥性子宮内膜炎とは?
流産や出産の後に起きる子宮内膜炎のこと。子宮内に胎盤等が残っていることから、炎症が強くなる傾向があります。
子宮内膜炎は、急性子宮内膜炎と慢性子宮内膜炎に分けられます。それぞれにどのような特徴があるのかをみていきましょう。
急性子宮内膜炎
急性子宮内膜炎は、突発的に細菌が入って発症します。機能層に炎症を起こすため、月経時に剥がれた子宮内膜と一緒に体外に排出され、自然に治ることもあります。
細菌の種類によって違いはありますが、次のような症状がみられます。ひどい炎症の場合、卵管、卵巣、腹膜まで広がることも。
〇発熱
〇下痢
〇下腹部痛
〇腰痛
〇 排便・排尿時の腰の痛み
〇おりものが増える
〇不正出血など
慢性子宮内膜炎
慢性子宮内膜炎は、細菌が子宮内膜の深い基底層に入り、軽度の炎症を持続的に起こします。 月経時に基底層が排出されないために感染が慢性化してしまうんです。
子宮内膜が作られるたびに炎症を繰り返し、自然に治ることはありません。 10%程度の女性に認められており、無月経や不妊症の原因となることがあります。
急性子宮内膜炎に比べると、ほとんど症状が出ないのが特徴。罹患していても無自覚なことがあります。
〇軽い腹痛
〇軽い性交痛
〇少量の不正出血
〇生理時の出血が少なくなる
老人性子宮内膜炎とは?
年をとると、子宮の自浄作用が低下します。ホルモン分泌が減ることで子宮頸部の粘液が減少し 様々な細菌が入りやすくなるんです。
閉経すると子宮内膜が体外に排出されなくなるので、感染しやすい状態になるというのも原因のひとつ。 老人性子宮内膜炎の症状としては、次のようなものがあります。
〇黄色や緑色の膿のようなおりものが出る
(強い悪臭を伴う)
〇発熱を伴う下腹部痛
〇全身の倦怠感
子宮溜膿腫とは?
子宮口や子宮頸管が狭くなるため、子宮腔 に膿がたまった状態のこと。けいれんや下腹部痛が起こることも。子宮ガンのときにもこのような状態になる場合もあるので、 自己判断はせずに医療機関を受診しましょう。
慢性子宮内膜炎は不妊の原因に?
慢性子宮内膜炎は女性の約10%が発症し、そのうち不妊患者の罹患率は2.8~39%。着床不全や妊娠初期の早期における流産の原因のひとつとして考えられています。
胚移植を何度しても着床しない反復着床不全(RIF)の方で慢性子宮内膜炎を発症している方は約14~67.5%。 反復流産の方で慢性子宮内膜炎を発症している方は9.3~67.6%と言われています。
なぜ子宮内膜炎になると着床不全になるのか?というメカニズムは、まだ解明されていません。近年の研究によって 、エストロゲン(女性ホルモン)といプロゲステロン(黄体ホルモン)に反応する受容体が少なくなることが着床不全に繋がるのではないかと報告されています。
子宮内膜炎の検査
子宮内膜炎の検査には、次のような方法があります。
①内診
②子宮鏡検査
③子宮内膜組織検査
④細菌培養検査
⑤ALICE検査(次世代シークエンサ)
⑥血液検査
①内診
おりものの性状や量、痛みの有無などを調べます。子宮を押し上げた際に痛みがある場合、子宮内膜炎の可能性があります。
②子宮鏡検査
直径 3mm程度の細く柔らかいカメラを子宮腔の中に挿入し、子宮の内面を観察して次のような症状がみられるかどうかを調べます。5分ほどで終了し、すぐに結果を聞くことができます。
〇マイクロポリープ(小さいポリープが多発した状態)の有無
〇 炎症性の発赤
〇 子宮内膜の浮腫
〇多数の赤点斑
異常な部位がある場合は組織生検にかけ、形質細胞というリンパ球浸潤があれば慢性子宮内膜炎と診断します。 子宮鏡検査では、着床障害の原因である子宮内膜ポリープや子宮粘膜下筋腫などがあるかどうかも分かります。
③子宮内膜組織検査
⼦宮内膜組織を採取し、免疫染色という方法によってCD138という細胞マーカーの陽性細胞(形質細胞)があるかどうかを顕微鏡で確認します。
形質細胞とは?
CD138という表面抗原をもつ免疫細胞。慢性感染や急性感染の末期、月経中に子宮内膜間質に出現します。
④細菌培養検査
子宮内膜の分泌液を採取し、数日かけて培養して細菌を調べる検査。 検体を採取する際、膣内細菌が混入してしまうことがあるために正確な診断が難しく、最近では別の検査方法を選ぶ病院が多いです。
⑤ALICE検査(次世代シークエンサ)
次世代シークエンサという遺伝子解析技術によって、子宮内膜の組織から細菌の遺伝子を検出し、子宮内の細菌叢 (フローラ) を分析します。 分析結果から、患者に合う薬を選択することも可能。診断漏れが少ない検査なので、今まで見逃されていたものも診断できます。
⑥血液検査
まれに血液検査を行います。子宮内膜炎では白血球数と炎症反応(CRP)が上昇する場合があります。
産褥性子宮内膜炎の場合
出産して24時間経過後に体温が2日続けて38℃をオーバーした場合、子宮内膜炎の可能性があると言われています。
子宮内膜炎の治療
子宮内膜炎と認められた場合には、次のような治療を行います。慢性子宮内膜炎に対する検査および抗菌薬治療には保険適用がありません。
①抗生剤
②プロバイオティクス
③エストロゲンの投与
①抗生剤
検査で特定された原因菌に有効な抗生物質を服用します。腸球菌、大腸菌、連鎖球菌,マイコプラズマ,ウレアプラズマ、バークホリデリアなどの細菌が慢性子宮内膜炎の原因になると言われています。
一種類だけでなく、複数の抗生物質を併用で投与することもあります。アレルギーの有無などによって使い分けます。内服後、99.1%の方が慢性子宮内膜炎を改善できると言われています。
②プロバイオティクス
乳酸菌などの善玉菌を摂取することで、体内の微生物環境を整えます。新しい治療方法であるため、抗生剤のように科学的な根拠が十分に解明されているわけではありません。
ただ、抗生物質に対する耐性菌の出現を防ぐ効果があります。また、抗生剤による副作用やアレルギーのある方に推奨することができます。
③エストロゲンの投与
子宮内膜の血管を新しく出したり、増殖したりするのを助けるために、女性ホルモンのエストロゲン投与をする事があります。
子宮内膜炎の原因
感染原因の菌としては、腸球菌、大腸菌、連鎖球菌、ウレアプラズマ、マイコプラズマ、ブドウ球菌、 クラミジア、淋菌などが分かっています。子宮内まで菌が入り炎症が拡大するのが子宮内膜炎です。
細菌感染のきっかけは、ナプキンやタンポンが汚れていたり、長時間取り替えなかったりしたことなどが考えられます。また、性行為感染症のクラミジアや淋菌が原因となる場合もあります。腟炎や子宮頸管炎から子宮内膜炎に発展するケースも。
細菌が入りやすいのは、子宮頸管が開いている妊娠や流産、中絶後など。更年期や老年期も、女性ホルモンの作用が弱まって細菌が入りやすいです。
慢性子宮内膜炎については、生理不順や無月経が続くと子宮筋層に炎症が広がり、次第に慢性化するとされています。慢性化する理由や子宮内膜症との関係などについては、まだまだ不明点が多いと言われています。
子宮内膜炎の予防
①局部を清潔に保つ
②通気性の良い下着をつける
③性感染症を防ぐ
①局部を清潔に保つ
細菌感染を防ぐため、局部を清潔に保ちます。 子宮頸管が開いている妊娠や流産、中絶後、更年期や老年期は特に注意が必要です。
ただし、洗いすぎは腟の自浄機能の低下を招いてしまうので注意しましょう。排泄・排尿時のふき取りは前から後ろに。ウォシュレットは雑菌が入りやすいです。
生理中はナプキンやタンポンをこまめに換えたりするようにしましょう。
②通気性の良い下着をつける
綿素材は細菌が繁殖しにくい素材です。
③性感染症を防ぐ
性感染症を防ぐために、コンドームを使用しましょう。性行為の前後にシャワーを浴びることも有効です。
まとめ
- 子宮内膜炎とは?
〇子宮の内側を覆っている内膜に炎症が起こる病気
〇細菌感染が主な原因
〇急性子宮内膜炎と慢性子宮内膜炎に分けられる - 急性子宮内膜炎
〇突発的に細菌が入って発症する
〇体外に排出され、自然に治ることがある - 慢性子宮内膜炎
〇自然に治ることはない
〇無月経や不妊症の原因となることがある
〇ほとんど症状が出ない - 子宮内膜炎の検査
①内診
②子宮鏡検査
③子宮内膜組織検査
④細菌培養検査
⑤ALICE検査(次世代シークエンサ)
⑥血液検査 - 子宮内膜炎の治療
①抗生剤
②プロバイオティクス
③エストロゲンの投与 - 子宮内膜炎の予防
①局部を清潔に保つ
②通気性の良い下着をつける
③性感染症を防ぐ
おわりに
子宮内膜炎は、細菌感染によって発症します。急性子宮内膜炎と慢性子宮内膜炎とがあり、後者は無症状であることが多いため、発見が遅れがち。
繰り返し発症するため、不妊につながりやすく、注意が必要です。今回は、子宮内膜炎について書きました。普段から注意することもありますので、ぜひ参考にしてください。
この記事へのコメントはありません。