体温と健康。熱中症よりも死亡者数が多い『低体温症』を知っていますか?実は屋内でもかかるんです!!
感染症の流行に伴って、体温を測る機会が増えています。改めてご自分の平熱を把握した方もいらっしゃるのではないでしょうか?
「低体温症」という言葉を聞いたことがありますか?私はかつて、34.1℃まで体温が下がったことがあります。声をだすことすら辛い状態。
調べてみると、思っていた以上に深刻な事態であることが分かりました。冷えとは区別される「低体温症」。あまり知られていませんが、熱中症よりも命を落とす方が多いんです。
雪山での遭難や溺死といった、一見非日常のことに感じやすいですが、実は家の中にいてもかかってしまいます。今回は、「低体温症」について見ていきたいと思います。
この記事の目次
- 1.理想的な体温とは?
- 2.低体温症とは?
- 3.低体温症になると?/a>
- 4.低体温症は他人事ではありません!!
- 5.低体温症の処置と注意点
- 6.低体温症の予防について
- 7.まとめ
- 8.おわりに
理想的な体温とは?
体温ってなに?
体温とは、文字通り人のカラダの温度のこと。代謝の過程で発生した熱は、血液によって全身から心臓に運ばれます。心臓の温かい血液が全身に送り出されることにより、全身が温かくなるのです。
体温は、熱産生と熱発散のバランスで決まります。体温が高すぎても低すぎても健康を損ねてしまうので、私たちのカラダには、体温を一定に保つ調節機能があります。
代謝とは?
生体内で生じる全ての化学変化とエネルギー変換のこと。 さまざまな栄養素が合成・分解されていく過程を指します。代謝の過程で熱が発生します。
平熱とは?
日本人の平均体温は36.89度(±0.34度)。意外と高めなんです。一般的に、平熱の正常範囲は35.5~37.5℃と言われています。
平熱には個人差があり、年齢ごとにも違いがあります。さらに、季節や一日のうちの時間帯、活動内容などによって変動します。ご自身の健康状態をみるために、ふだんから平熱を把握しておきましょう。
体温について、詳しくは次の記事を参考にしてください。
健康管理に大切な体温。平熱とは?体温計の選び方って?計測で気をつけるポイントもお伝えします!!
低体温症とは?
低体温とは?
低体温は、深部体温(脳や内臓などカラダ内部の温度)が下がってしまうことをいいます。低体温には明確な定義はなく、平熱以下である35℃以下を指すことが多いようです。
一般的な体温計では34℃未満の体温を測ることができないため、直腸用の体温計で測定します。深部体温によって重症度が変わります。
〇軽症(32~35℃)
〇中等症(28~32℃)
〇重症(20~28℃)
低体温と冷えとの違い
低体温は、 深部体温(脳や内臓などカラダ内部の温度)が下がってしまうこと。 それに対して冷え症とは、体温に関係なく、手足や下半身などが冷えて不快や苦痛を感じている状態を言います。
指先などが冷たくなっていても、カラダの中心部の温度は正常なことが多くあります。必ずしも低体温と冷え症がリンクしているわけではないんです。
低体温症になると?
低体温症はカラダの震え(シバリング)から始まります。 体温が下がると、まず筋肉が震えて体温を上げようとします。
症状が進行するとカロリーを使い果たしてカラダの震えが止まります。体温が下がるにつれて筋肉の硬直、脈拍や呼吸の減少、血圧の低下などが起こり、命を落とす危険性が高まります。
中等症以上の死亡率は40%にのぼるというデータも報告されています。低体温症は自覚がないまま進行して、手遅れになる可能性も。
カラダの震えが止まると症状が進行しているということなので、その前に適切な処置をすることが大切になります。低体温症に見られる症状を挙げておきます。
〇身体の震え(シバリング)
〇動作の鈍化
〇感覚の麻痺
〇思考力・判断力の低下
〇昏睡
低体温症は他人事ではありません!!
低体温症というと凍死や溺死が浮かび、非日常というイメージがあります。ところが意外にも、凍死の75%は家などの屋内で発生しています。さらに死亡者の数は、熱中症よりも多いんです。
低体温症は極寒の環境だけでなく、気温15~19度でも発症することがあるため注意が必要です。
厚生労働省の発表によると、2017年の熱中症での死亡者数635人に対して、低体温症による凍死は1317人。65歳以上の高齢者が全体の80%を占めています。
低体温症の処置と注意点
低体温症は、初期であれば乾いた温かい衣類に着替えさせて毛布でくるみ、熱い飲みものを飲ませます。意識不明の場合は、可能であれば濡れた衣類を脱がせて、同じように着替えさせて毛布にくるみ、救急車の手配をして、暖かい場所で待ちます。
この時に注意しなければならないのが、急速にカラダを温めないこと。心停止に至る「復温ショック」の危険性が高まります。重症なケースほど緩やかに温めていくことが大切です。
復温ショックとは?
冷えた血液が急速に心臓に流れこんで心室細動を起こすこと。
低体温症の予防について
さほど注目されていない低体温症ですが、実は身近で恐ろしい状態であることがお分かりいただけたと思います。低体温症にならないためにはどうしたらいいのでしょうか?
大体の方は、体温を測って熱が高い場合に薬を飲んだり病院に行ったりと、何らかの対処をするでしょう。ところが、体温が低くてもさほど気にする方がいないというのが現状です。
低体温症は登山などの非日常的な場面、マラソンなどの運動時、海や川などでのレジャー、災害時などで起こりやすいです。それに加えて高齢者や持病を持っている方などは日常生活の中でかかることもあります。
予防のために効果的だと言われる項目を挙げます。
①ふだんから平熱を把握しておく
②温かい環境を整える
③カラダの震えなどを無視しない
場面ごとの予防について
①登山時
登山時に低体温症になりやすいのは、薄着であったり、雨などで衣類が濡れて熱が奪われたりしたときです。以下のような予防策をとりましょう。
〇備え(防寒着・雨具など)を十分にする
〇衣服が濡れたら着替える
〇こまめに汗を拭く
〇こまめに水分やカロリーを摂取する
②マラソン時
気温が低いときのマラソンは低体温症になる可能性があります。その原因は薄着であったり、雨や汗で衣服が濡れて体温が奪われたりすることです。予防策は次の通りです。
〇ウエアを選ぶ
・速乾性のもの
・気温に適したもの
〇防寒具や雨具の準備
〇こまめに水分を補給する
③山や川などのレジャー時
長い間水に浸かっていると、低体温症になる場合があります。夏でも低体温症にかかったという報告がありますので注意しましょう。
特に子どもは発見が遅れる場合があります。大人が意識して唇の色や震えなどをみてあげる必要があります。予防策を挙げておきます。
〇カラダを温めるため、定期的に水から上がる
〇震えや唇の色を観察する
〇こまめに水分やカロリーを補給する
④災害時
災害時は、予期せぬ環境に身を置くことになります。疲労や睡眠不足、極度の緊張状態によって体力や気力が落ちてしまいます。
冬場は気温が低いにも関わらず、ライフラインの断絶により寒い環境に身を置かなければならないケースもあるでしょう。
食料の配給がままならず、量が足りなかったり、栄養バランスが整った食事や温かい食べ物を口にすることが難しいかもしれません。
〇できるだけ温かい服装をする
〇避難所では寝具の下に段ボールを敷く
〇隣の人と身を寄せ合って暖をとる
〇避難グッズに防寒用の道具を備えておく
・アルミシート
・カイロ
・毛布など
・水だけで温められる非常食
リスクが高い高齢者
厚生労働省の発表によると、低体温症により死亡した65歳以上の高齢者は、全体の80%を占めています。 家の中にいてもかかってしまう人がほとんどです。
年をとると体温調整機能が低下します。また、筋肉量や食事量が減少することで熱を生み出す力が弱くなることも一因です。
認知機能の衰えなどから体温の低下を自覚しにくくなり、発見が遅れてしまうというリスクも高まります。高齢者の低体温症を防ぐにはどうしたらいいのでしょうか?
〇寒い日は我慢せず暖房器具を使う
〇温かい服装をする
・ネックウォーマー、レッグウォーマーの使用
・靴下を着用する
〇ホッカイロを使う
〇冷たいものを摂り過ぎない
〇身体を温める食事をする
〇適度な運動で筋肉をつける
低体温が身体に与える影響とは
36度未満の軽度低体温でも、免疫力が低下し、感染症や脳血管障害、糖尿病など、身体に様々な不調が出やすくなる可能性があるといわれています。
疲れやすくなったり、風邪をひきやすく、また風邪がなかなか治らないといった症状も。肺炎やインフルエンザのリスクも高まります。日頃から平熱を把握し、一定の体温を保つように意識しましょう。
まとめ
- 体温とは?
人のカラダの温度のこと
熱産生と熱発散のバランスで決まる
日本人の平均体温は36.89度(±0.34度) - 低体温症とは?
体温が平常より1℃以上高くなった状態
日本の感染症法では「37.5℃以上を発熱、38℃以上を高熱」と定義している - 低体温症になると?
〇身体の震え(シバリング)
〇動作の鈍化
〇感覚の麻痺
〇思考力・判断力の低下
〇昏睡 - 低体温症は他人事ではありません!!
〇死亡者の数は、熱中症よりも多い
〇凍死の75%は家などの屋内で発生
〇65歳以上の高齢者が全体の80%を占めている - 低体温症の予防
①ふだんから平熱を把握しておく
②温かい環境を整える
③カラダの震えなどを無視しない
おわりに
低体温症と聞いても他人事だったのですが、34.1℃まで体温が下がったときに事の重大さを知りました。雪山などの特別な環境でなくても、かかる可能性がある低体温症。
ストレスフルだったり、食生活をはじめとする生活習慣が乱れがちな現代において、かかりやすいと言われる高齢者以外の方々にも注意が必要だと感じます。
身を守るためには、ふだんからご自分の平熱を把握して変化を察知すること、低体温症に対する知識をもつことで予防策を講じることが大切。ぜひ今回の記事を参考にしてくださいね。
「発熱」についての記事はこちらから
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